trick
赤と青を混ぜたら、紫になって
あれとこれを混ぜたら、次は何が出来る
トロトロに溶けた、甘い甘いモノを
君に贈ろう
僕のいたずら
非番の朝。
午前7時過ぎ。
目に入るのは、イザークの背中。
白いきれいな肌を見た後に、起き上がる。
いつもの癖で、なかなかゆっくりと寝てられない、しかし、今日はやけに身体がだるい。
元々寝起きは低血圧で、身体がふらつくので、最初は気にしなかった。
アスランは起き上がって、床に放り投げた上着を着る。
そのときになって気付く。
自分の身体の違和感に。
ふにっ
袖を通す時に、ありえないものが自分の腕に触れた。
それは、男なら絶対にないもので…昨日の夜は散々目にしたイザークにはあるのもので…。
一瞬顔面蒼白状態に陥る。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
艦内に響き渡る、アスランの大声。
イザークは勿論、隣の部屋の住人は、その大声でたたき起こされた。
「どうした!!」
昨晩の疲れから、惰眠を貪っていたイザークは、アスランの大声で飛び起きた。
「イザぁぁぁぁ」
起き上がると、半泣きのアスラン。
いや、アスランなのだが、いやに背が小さい。
そして、声も少々高い。
「…ア…スラン?」
「そうだよ!!どうしよう、ねえ、どうしたら良いの俺!!」
アスランは再度ベッドに乗り、イザークの肩を盛大に揺すり始めた。
寝起きに、これはきつい。
慌てて、押し返そうとしたら、ありえない感触。
思わずイザークはそれを掴んだ。
ふにふに
「うわぁ、止めてイザーク」
「なんだこりゃ!」
ありえない!!
どうしてアスランに胸があるのか…。
そして、思いのほか背も縮んでいる、イザークよりも、もしかしたら小さいのではないか。
そして、声。
顔も骨ばっておらず、ふっくらしている。
可愛い、女の子だ。
「ど…どうしよう」
相変わらずパニックのアスラン。
確かに、昨日までは男だったのに朝起きていきなり女になっているという、
なんとも漫画チックな出来事に巻き込まれてしまったので気が動転するのもわかる。
だが、しかし。
「…その前に」
「服をお互い着よう」
イザークは冷静だった。
アスランは、ズボンは、ぶかぶかで腰で止まっていたが、履いているし、
上着も、前ボタンを閉めていないが羽織ってはいる。
しかし、イザークにいたっては、シーツで少々隠れてはいるものの、
昨日アスランに脱がされたままの格好だ。
これじゃ、話も進まない。
イザークは、上着、ズボン等を床から拾い上げると、さっさと着る。
「服…私の持ってくるから。もう少し待ってろ!」
そう言い残して、一度自室へと戻った。
アスランは、ベッドの上でいまだ放心状態。
それを放っては置けなかったが、仕方がない。
このままでは風邪を引く。
イザークは、寝起きの身体と腰の痛みに鞭を打って、部屋まで走った。
部屋から今のアスランにでも着られそうな服を引っつかみ、再度アスランの部屋へ戻った。
今だ、ベッドの上で放心しているアスランに、イザークはいそいそと服を着せた。
自分の服で、丁度よいくらいだ。
「…どうしてこうなったのか、昨日の出来事から確認していこうな」
ぽんぽんとアスランの頭をなでる。
普段のイザークからは考えられないような、優しい言葉。
「イザ…」
珍しい…とでも言いたそうな目線を向ける。
「いや…お前結構可愛いから…妹みたいで、ちょっと嬉しい」
「…ひどい、俺が一生このままで、イザークはいいの!!」
「だから、解決方法を探そうと言ってる!!」
「昨日のことから思い出そう…」
一度、アスランを部屋のリビングまで連れて行き、ソファに座らせる。
そして、イザークはキッチンでコーヒーと紅茶を煎れて、
それと部屋から持ってきたパンを皿に並べた。
このアスランを外に出すわけには行かない。
「うん…昨日は」
アスランが昨日の行動を話し始めた。
「アスラン!交代だよ〜」
昨日の午後6時過ぎ。
アスランは、珍しく通信室勤務だった。
クルーゼ隊は先の大戦で、機能を果たせなくなるぐらいまで隊がぼろぼろになった。
隊長は死亡。
その他クルーも、負傷したものがほとんどだった。
なので、正式に隊が決まるまで、アスラン達元クルーゼ隊は雑用係と化していた。
それでも、軍を離れなかったのは、やはりプラントを守りたいという意志があったからであろう。
通信室に陽気に入ってきたのは、ラスティーそして。
「お疲れ様、アスラン」
大戦後、ザフトに志願した、キラだ。
大戦中はお互いに敵だったのだが、イザークがらみでキラはザフトに入ってしまった。
そして、元々ずば抜けてMS操作や運動神経がよかったので、
好きなところに行ってよいと上から言われた。
彼は迷わずイザークのいる所を選んだ。
だが、その頃にはイザークはすでにアスランの彼女と化していた。
後からそれを知ったキラとしては物凄くそれが不本意だった。
そして、キラは赤服を支給され、元クルーゼ隊の一員として働き始めた。
また、赤服が似合っているので、艦の女性クルーはアスランとイザークが付き合ってしまった今、
キラにその矛先が向いてしまった。
キラとしては、それも面白くないのだが。
「あぁ、お疲れ、キラ、ラスティー」
夜勤は、二人一組で行う。
アスランは申し送りをして、通信室を出ようとした。
そのとき、キラがアスランにある物を手渡した。
飴だ。
「これ、美味しいから。アスランもどお?」
キラは、甘い物が好きで良く持ち歩いている。
いつもそれをもらっているので、今日も特に気にせずそれをもらった。
「じゃあね」
キラが手を振り、アスランを見送る。
しかし、扉が閉まった瞬間、キラは黒く微笑んだのだった。
「頑張ってね…アスラン」
「キラなんか言った?」
先に通信機の前に座っていたラステッィー
「いや、さて。解き難い、暗号でも送ってみようかな…」
「おいおい…」
「…キラから、飴をもらって…」
「食べたのか!!」
可愛いアスランがコクコクと頷く。
今の話を聞く限り、犯人はキラだ。
どう考えても…キラだ。
「はぁ…まったくアイツは、ろくな事をしないな」
「いつも貰ってるし、気にしなかったんだけど…」
「わかった…今から、キラを呼んで来るから、飯食っとけよ」
そういい残して、再度イザークは、走った。
昨日からの夜勤で、まだ通信室にいるだろう。
午前7時半。
本当ならば、もう終わっている時間だが、朝は通信回線がとても混むので、
なかなか定時には上がれないのだ。
きっと、ラスティーや、朝から勤務のクルー達とまだ作業をしているに違いない。
居宅スペースから通信室は少々遠かった。
その距離を、急いで走るのは、また腰の負担になった。
「キラいるか!!」
自動ドアが開いた瞬間に、言葉を発する。
案の定、通信室の中にキラはいて、交換作業の真っ最中だった。
顔をイザークの方に向け、密かに微笑む。
「…以上、です。はい…はい…了解」
通信を終えた、キラがヘッドマイクを外す。
ラスティーもイザークに気がついたが、まだ通信が終わらないようで、
目線はこちらに一度着たが、またすぐにモニターとにらめっこしてしまった。
「キラ…お前なぁ」
「僕もう終わりだから、外でようか。ラスティー先行くね」
ラスティーは無言で手を振る。
そのほかのクルーにも一言二言挨拶をして、キラとイザークは通信室を後にした。
「まったく、お前はなんて事をしてくれたんだ!!」
アスランの部屋に向かいながら、イザークが文句を言う。
「だって…つまんないんだもん」
「そういう問題じゃないだろうが!!」
つまらないとか、暇とかでキラは色々問題を起こす。
それが、自分が原因だとわかっているので、なんとも言えないのだが。
キラのことは、ストライクの問題やらナンやらで、入隊当時はもう過去の出来事だったとしても、なかなか打ち解けられなかった。
彼は色々自分に謝ってくれたし、本当に気遣ってくれたので、それは感謝している。
しかし、彼の自分に対する恋愛感情は受け入れられない。
「とにかく…元に戻る方法を…教えてくれ」
「えぇ…いいじゃない、このままで」
「良くない…ほら、とにかく入ってアスランを見てみろ!!アイツ、可愛くなっちゃってるから」
キラをアスランの部屋に連れて行き、アスランを見せる。
すっかり、意気消沈してしまったアスランを見て、キラがほくそ笑んだ。
それを見たイザークの容赦ない鉄拳がキラの頭に飛ぶ。
「笑うな!!馬鹿者」
「…キラ…お前ぇぇぇ!!」
キラの訪れに気付いたアスランが立ち上がり、キラに突っかかった。
「おっと…ホントだ。可愛くなってる」
「お前…よくもぉぉぉ」
「ほら、落ち着け!!」
とりあえず、イザークが仲介に入る。
このままじゃ埒が明かないので、一端二人を座らせて、彼女がキラを説得した。
「お前が、私を追ってザフトに入って事も知ってるし、
その…そのことでアスランに不満があることもわかってる。
でも、やっていいことと、悪いことがある!!子供じゃないんだ…判るだろ?」
ぽんぽんとイザークに頭をなでられて、キラはしゅんとなってしまった。
「わかった…わかったよ。ごめんね、アスラン。ただちょっと自分の作った薬の
実験台になって欲しかっただけなんだ」
「…実験台」
「あーもー。で?どうすれば治るんだ?」
実験台という言葉を聴いて、またアスランの額に青筋が立つ。
「え?あぁ…昨日もしたでしょう?寝ればいいんだよ」
「…寝る?」
イザークがあっけに取られる。
でも、その横でアスランがつぶやく。
「…昨日もした??」
「うん。簡単でしょ?じゃあ、僕は夜勤明けで眠いから、もう寝るよ…ホント、ごめんねアスラン」
バイバイ。
そういって部屋に戻って行くキラ。
台風が去って、残された二人。
午前8時
アスランの頭の中を、昨日したこと・寝ることが駆け巡った。
とりあえず、今日は二人とも非番。
ずっと艦に篭りっきりなのも、イザーク的にはつまらない。
本当だったら、二人でプラントに降り予定だったのだから。
「…出かけるか?気分転換に」
「えぇ…この格好で?」
「あー…服変えるか??一応スカートもあるぞ」
「いや、そういう意味じゃなくて」
女になって、艦内に出たら、誰かに会うかも知れないし、それがミゲルやラスティーだったら、絶対に笑いものにされる。
絶対される。
そんな、名誉不遜極まりないのは嫌だ。
「だが、出かけようと言い出したのはお前だぞ!」
イザークは外出したい。
しかも、今のアスランは、アスランであって、
アスランじゃないのでそれはそれで姉妹のように買物を楽しむのもいいかもしれないと思っていた。
こんな機会はめったにない。
「でも…」
「フードでも何でもかぶっていけばいいだろ!!で、プラントに降りたら、
誰もお前のことなんて知らないんだから、大丈夫だ!!」
「…そこまで言うなら」
「よし、言い寄ってくる奴がいたら、私が何とかしてやる。
まぁ、そう簡単に私に話しかけられるとは思わないがな」
「お願いします」
今日は、どうしても弱気になってしまうアスランだった。
「よし…いいぞ!!」
イザークに言われるままに艦の中を進む。
現在イザークが駐留している母艦には、決まった時間に、非番のクルー用にプラントへ向かう小型のシャトルが出ていた。
午前9時。
出発時間に合わせ、乗り場に二人は急いだ。
「IDを…」
シャトルに搭乗する時は、必ずIDカードを見せなければならない決まりになっている。
「あぁ…」
「イザークさんでしたか」
登場案内をしていた若いクルーが、イザークのIDカードを見て喜ぶ。
これは好都合だ。
「ご苦労だな…すまないが、休暇に友人を呼んでいたんだが…証明用紙をなくしてしまってな。
通してもらってもいいだろうか?」
イザークの後ろから、フードをかぶった少女が顔を覗かせる。
「イザークさんのご友人ならまったく問題ありません。どうぞ、ご搭乗ください」
「たすかった…恩にきるぞ」
そう言って、二人はシャトルに乗り込んだ。
なんともセキュリティーの甘い所だと思いながらも、今日はそのお陰で助かったのだ。
文句は言わないでおこう。
「はぁ…」
シャトルに乗り込んで、アスランが窓際の席に座る。
フードは怖くて取れなかった。
「まぁ、中から出る分には監視は甘いだろうな…」
「じゃあ、入る時はどうするのさ」
「私の顔パスだ」
「そんなに上手くいくの?」
アスランはどこからそんな自信が出てくるのか、不思議だったが、
今の例を取って見ても、イザークは誰からも信頼され、
羨望の眼差しで見られていることは良くわかった。
これでイザークがか弱い女性だったら…と思うが、その辺は心配無用で、
腕っ節のよさも知れ渡っているので、賢いクルーたちは誰も彼女に手を出そうとは思わないようだ。
第一、アスランという彼氏がいることもみな知っている。
イザークの報復よりも、アスランからの報復の方が彼らたちには怖かった。
「あー…久々のプラント」
「はぁ…漸く着いた」
シャトルに搭乗中も気が抜けなかった。
乗務員が船内販売を持ってくるたびに、アスランは気が気じゃなかった。
いつばれるか、いつばれるか…冷や冷やしていた。
それに引き換えイザークは、販売員からお菓子を買い、飲み物を買い、かなりくつろいでいる様子だった。
気を利かせて、アスランにも飲み物を買ってくれたが、アスランは一口も飲めなかった。
そして、一時間後。
午前10時
漸くプラントの宇宙空港に到着した。
「とりあえず、買物するぞ」
「わかった」
誰も知らない人間から見たら、美人な友人が二人で歩いている図だ。
アスランとしては、自分の(元の姿)服が欲しかったが、今日は諦めざるを得ない状況だ。
仕方ない。
イザークの買物に付き合おう。
彼女の行きつけの店に入り、あーでもない、こーでもないと言い合う。
イザークはアスランが可愛い女の子になってしまっているので、
女同士で買い買物に来ているような感覚で、意外と嬉しかった。
イザークは、普段からディアッカなど男と過ごす機会が多かったため、女性の友人は本当に少ない。
まして、彼女は軍人であるのでなかなか、友人である彼女達とは会えないし、一緒に買物に行ったこともない。
キラの悪戯でこうなってしまったとしても、「寝れば」治るので、安心だ。
イザークは、嬉々として買物を楽しんだ。
そして、昼食を取り、今度は映画を見た。
イザークとしては、存分に非番を楽しんだ。
アスランも、最初は気が気でなかったが、最後の方は、もうどうでも良くなっていた。
楽しそうな彼女も見ることが出来たので、よかったと思う。
しかし、アスランの頭の中には、「昨日した、寝ること」が残っていて、どうしたものかと考えていた。
午後5時
母艦に向かうシャトルの最終便が出る時間。
早めに空港に着き、手続きを行う。
「イザークジュールだ…艦に戻りたいのだが…」
「あ、イザークさん。お疲れ様です」
若い男性の案内係がにこやかに対応してくる。
またさっきと同じパターンだ。
アスラン的には、どうも面白くないが、何も出来ないので黙っている。
「失礼ですが、そちらの方は?」
受付係がアスランを見つけ、イザークに尋ねる。
「私の、友人でな。是非艦を見たいというので、連れて行きたいのだが…いいだろうか?」
「イザークさんのご友人でしたら、勿論大丈夫です。お時間になるまで、控え室でお待ち下さい」
「すまない…助かる」
「いいえ、とんでもないです」
やっぱり顔パスだった。
「はぁ…楽しかったな」
「そうだね」
シャトルに乗り込み、行きと同じように、アスランを窓際の席に座らせる。
イザーク的には今日はとても楽しい日であった。
服も買えたし、見たいと思っていた映画も見ることが出来た。
美味しいランチも食べ、デザートもふんぱつして高いものにした。
一言で言えば幸せ。
しかし、アスランは
気が気じゃなかった。
いつばれるか。
いつ知り合いに感づかれるか。
だが、思っていた以上に気付かれないもので、いらぬ心配だったようだ。
『まもなく当機は…』
艦内アナウンスが流れる。
シャトルの窓からは母艦が大きく見えており、もう到着だ。
アスランは念のために、フードを深くかぶりなおした。
「さぁ…走るぞ!!」
着いてすぐ、イザークは自分達の居室へと走り出す。
午後6時。
交代の時間で艦内は慌しい。
それに上手くまぎれて、部屋に戻れればいい。
しかし、そう上手くはいかなかった。
「イザーク??」
走っている二人の横をミゲルが通り過ぎた。
気付かないフリをして、通りすぎてしまえばよかったのだが、イザークはついつい立ち止まってしまった。
イザークが立ち止まったことにより、後ろから着いてきていたアスランも必然的に止まらざるを得ない。
「わぁ」
アスランはイザークの背中に突っ込んだ。
「大丈夫か?」
ミゲルが心配して駆け寄る。
イザークが慌てて、アスランを自分の後方に隠した。
「友達??」
「そ…そうだ」
「へぇ…」
ミゲルがニヤニヤしながら、後ろのアスランを見ようとする。
そして。
「アスランだろ?キラに聞いたぜ」
そういって、アスランのフードをひょいっと外した。
「ミゲル!!!」
アスランが慌てて、もう一度かぶりなおそうとする。
「あはははっ。ホントに可愛くなってるのね…」
「ミゲル!からかうのは止めろ…次シフトなんだろ?遅れるぞ」
「ごめんごめん…じゃ、がんばってねぇ〜」
ひとしきり笑って、ミゲルは自分の勤務先に戻っていった。
最後の最後で、アイツに掴まるとは、ついてないな。
「はぁ…戻ろうか」
「うん」
イザークがそういい、アスランもかなり疲弊した声で相槌をうった。
お互いに部屋に戻る。
イザークは、買い込んだ服の整理をした。
そして、午後7時。
アスランがいきなりイザークの所まで来たのだ。
「どうした?」
「いや…ちょっと」
あれほど外に出るのをイヤがっていたのに、どうしたのか。
しかも、自分の赤服を持ってきている。
「ん?」
「元に…戻りに来た」
「は?寝れば治るんだろ?」
「イザークは聞いてなかったの!!」
部屋に来たアスランをとりあえずソファに案内する。
話の辻褄が合わない。
「キラは、昨日した寝ることって言っただろ?」
「だから…寝ればいいんだろ?」
何を言っているのだこいつは。
「俺たち、昨日の夜なにした!!」
いきなり、ずいっと寄って来られて、イザークは後ずさった。
可愛いアスランが真剣な顔をしている。
「昨日の…夜?」
「そう!!俺達、昨日は…セ」
「うわーーーー!!!」
思い出して、イザークがアスランの口を塞ぐ。
「思い出した?」
「…だが、今のお前は女だろう?」
胸はあるし、背は縮んでしまったし、どうしろというのだ。
「とりあえず、キスから…」
アスランは、混乱しているイザークを尻目に、彼女をソファに押し倒す。
イザークは、可愛い女の子アスランが自分の上に乗って、顔を寄せてくるのを必死に押しとどめた。
「止めろ!!早まるな」
「俺は、男に戻りたいんだ!!」
「でも、でも…」
ソファの上ではたから見たら女二人が取っ組み合っているのも変な光景だ。
「イザークはこのまま俺が、ずーっと女でもいいって言うのか!!」
「こ…こんなことするなら、女でもかまわん!!」
女になってしまったアスランは意外に力がなく、イザークによってあっさりと、ソファのしたに転がされる。
「うわ!」
ごろん。
ゴッ!
アスランが頭を打った音がした。
「だ…大丈夫か!!」
「…」
思わず、床に彼?彼女?を落としてしまった。
しかし、返答がない。
「おい!!おい!!しっかりしろアスラン!!」
自分も床に降りて、ゆさゆさとイザークはアスランを揺する。
時計は午後7時半を表示していた。
「い…たい」
床に転がったアスランが程なくして反応を見せる。
「ん?」
心なしか、声が前の状態に戻っている。
イザークが貸し与えたシャツも、ピチピチだ。
「お…お前…戻ってるぞ!!」
「え?」
アスランが、自分の手を見る。
骨ばった指。
顔を触っても、さっきまでの柔らかさはない。
イザークのズボンも裾が短く、きついのでウエストが痛い。
「も…もどった!?」
アスランが叫んだ瞬間、イザークの部屋のインターフォンが鳴った。
「様子見に来たんだけど…あ、戻ってる」
「キラ!!」
イザークがドアを開けると、そこにはキラがいた。
「アスラン、何時頃飴食べた?」
「昨日の夜7時半過ぎかな…」
とにかく元に戻れたので、アスランはイザークの寝室を借りて、持ってきた赤服を着た。
イザークが紅茶を用意して、アスランとキラに差し出す。
「そっか…で、君達昨日は寝たんでしょ?」
「あぁ」
「馬鹿!!!」
イザークが、隣に座ったアスランの頭を殴る。
「イタッ」
「恥ずかしいこというんじゃない!!キラもだ!」
「う〜ん。効果が出るまでに時間がかかるし、以外に持続性がないなぁ…これはもっと改良のよちがありそうだね」
「「は??」」
イザークとアスランが同時に発する。
「寝れば治るんじゃないのか?」
イザークが問いかける。
「ん?一日の効果で作った予定だったんだけど…いまいちだったね。でも、次は!」
まだ、懲りずに作ろうというのか。
さりげなく、ガッツポーズをするキラ。
「キラ…いい加減にしろよ」
アスランが怒りをこめて牽制するが、あまり効果はなさそうだ。
「さて…次もすごいものをつくって見せるから!!」
キラはある意味最強で。
イザークは、このやる気をもっと他の方向へ持っていければどんなにいいものかと思う。
しかし、アスランも元に戻ったし。
事件は一件落着だった。
いつ、また彼の悪戯に困らされるかしれないが…。
「まったく…」
キラが帰って、イザークにどっと疲れが押し寄せてきた。
ソファにだらんともたれ掛かる。
「とにかく、よかったなアスラン」
「うん…あのままだったら、本当にどうしようかと思った」
隣に座っている、アスランをイザークはちらっと見る。
「はぁ…ほんとに元のお前だな」
イザークが少し体勢を変えて、アスランの顔に指を寄せる。
この顔がさっきまで、ふっくらとしていたのだ。
声も、いつもより高くて。
でも、やはり男の彼のほうが、イザークは好きだ。
「コッチのほうが…」
「ん?」
アスランがイザークを引き寄せて、向かいあうように座り、腰に手を回した。
「何?言いかけたの」
「いや…」
額をくっつけられて、イザークが笑う。
そのままゆっくりと目を閉じると、アスランの渇いた唇が自分のものに降ってきた。
この唇の感触も、自分の腰に回っている腕も元の彼だ。
電気を消した、イザークの寝室へ、どちらから誘うともなく、移動していた。
寝室に入り、立ったままイザークに啄ばむようなキスを仕掛け、
それをだんだんと深いものにしていった。
「んぅ…っ…」
深く与えるようなアスランの口付けに、飲み込みきれずイザークの口の端から唾液が滴り、
彼女の胸元を濡らす。
水音が部屋に響いた。
キスの後、アスランは、イザークをベッドに横たえて、折角着込んだ赤服の上着を脱ぐ。
そして、自分のもう豊かな胸のない、胸板へとイザークの片手を持っていった。
「ないでしょ?」
イザークが頷く。
そして、アスランは、その手を持ったまま、自分の下半身にゆっくりとイザークの手を移動させた。
いきなりで、イザークはびっくりし、アスランの手を振り払おうとする。
でも、アスランはその手を離さず、ズボン越しに自身に触れさせる。
「何!!」
「下も…確認する?」
恥ずかしそうに顔を横にしたがために露わになった首にアスランが舌を這わせ、つぶやく。
イザークはビクッと震えた。
「イザ…」
手を離し、耳元で囁く甘い声。
何かをイザークにお願いする時の声だ。
して欲しいことは一つ。
「舐めて」
アスランはベッドヘッドに寄りかかる。
イザークは、赤くなりながらも、彼の足の間に移動して、思い切ってズボンのチャックに手をかけた。
そして、彼自身をゆっくりと取り出し、ぺろっと舐める。
「イザ…咥えて」
「うん…んぅ…はぁ…むぅ」
すでにそれは熱く高ぶっていて、イザークの口には大きすぎる。
それでも、イザークはめい一杯口を開いて、何とかそれを飲み込み、手も使ってしゃぶった。
時折歯が当たって、アスラン自身がビクッと震える。
「イザ…いいよ」
アスランは、イザークの髪をなでて、自分でも腰を動かす。
美人で潔癖と見られがちな彼女が、自分を咥えて舌を絡めているのを見るのは倒錯的で。
まるで、天使を汚しているような気になってくる。
アスランはイザークの口をまだ味わっていたい気持ちを抑えて、彼女を自身から離させた。
「んぁ」
「男だったでしょ?」
それを確認させるためだったのか。
イザークは複雑な顔を向けたが、アスランは満足なようで、ニコニコしているだけだった。
「今度は一緒に、気持ちよくなろうね」
そういうと、アスランはすばやくイザークの服を脱がせた。
「胸は、イザので十分だよ」
彼女を生まれたままの姿にし、再度横たわらせると、イザークの胸の頂に顔を寄せ、口付け、舐める。
「ぁん…くすぐ…ったい」
「そう?気持ちよさそうだけど…」
「言うな、馬鹿!」
いきなりコズかれる。
それに反撃するように、アスランはイザークの足を開かせ、下腹部に顔を寄せた。
「なっ、アス…止め!」
思わず何をされるかわかってしまい、静止の声を上げるが、彼は止まらなかった。
ぴちゃっと音がして、イザークの腰がビクッと震える。
「アスラン…ホント…やぁ!」
ざらっとした舌がイザークの敏感な所を通る。
思わず、イザークはアスランの頭を掴んだ。
「ちょっと…抜ける!」
前髪を捕まれたことで、アスランが顔を上げる。
「だって!!」
「イザも舐めてくれたから…お返し」
「しなくていい!!!」
「じゃあ…抱いていい?」
こういうところをいちいち確認してくる所が、嫌だ。
此処まで強引に突き進んできたのに、最後はイザークに決めさせるのだ。
イザークは睨むが、少々涙目な時点で逆効果だ。
「ダメ?」
「…だ…ぃて」
「了解」
「イザ…気持ちい?」
「う…ぅん…あぁ…っ…いい…っ」
突き上げる速度を速めながら、アスランが尋ねる。
「男の俺のほうがいい?よね」
「ぁん…な…なに?」
快感が強すぎて、アスランの声が耳に入ってこない。
アスランの背中に手を這わせて、イザークは彼を自分に引き寄せた。
動きが止まる。
「き…聞えない」
「イザは、俺が男に戻ってよかったでしょ」
「うん…よ…よかった」
汗で蒸気して、赤くなった顔で、アスランの問いに答える。
行為で精一杯なのに、笑おうとするその様がなんとも可愛らしく、アスランは自分の限界を感じた。
「んぅあん!!」
急に、自分の中のアスランが大きくなるのを感じて、イザークが顔をゆがめる。
自分の中の許容範囲を超えて、苦しい。
「ごめ…もう、俺がヤバイ」
動くよという前に、アスランがさっきより速度を速めて、動く。
「ちょ…あっ…はや…い…あぁん…アス」
「ごめん余裕っ…ない」
イザークの腰を抱えなおすと、突き上げる角度が変わり、イザークの声が上がる。
「そこ…やぁぁぁ!!」
「うそ…だろ?」
「ホンッ…ト…やぁだ…あぁっ…あぁん!」
「もう、イクよ」
アスラン以上に、イザークも限界だったようで、先にイザークが最奥を突かれたことで達する。
「イッ…あぁぁ!!」
「くっ」
その締め付けでアスランも達し、一瞬イザークの上に倒れ掛かった。
「はぁっ…はぁ…はぁ…重い」
「ご…ごめん」
慌てて、アスランがどくかと思ったら、イザークを抱きしめて位置を逆にした。
つまり、イザークがアスランの上に乗っかった。
「なっ!!おい、離せ」
「イヤ!…もう少しこのままでいさせて」
そういわれると、退くに退けない…。
イザークはそこで、仕方なく許してしまうのだが、結局はアスランのいいように丸め込まれ、
第二ラウンドへ突入してしまうのだった。
翌朝、あまりの腰の痛さに、キラにもっと持続性のある物を依頼しようか
本気で悩む彼女の姿があった。