閉じ込める5題
だんだんと肌寒くなってきた気がするある日。
すでに逃げる気力も失い、イザークはベッド上での生活に慣れてしまっていた。
そんな時。
イザークの部屋、正確にはアスランの寝室に、彼が大きな箱を持って入ってきた。
乱れた生活はだんだんとおとなしくなっていき、痩せたせいで、すこし張りやつやが無くなってはいたが、イザークが暴れるたびに出来ていた痣や傷も今ではほとんど見当たらない。
物音に気づき、イザークは重い頭を起こし、ベッドから上半身を上げた。
「なに…」
「今晩、君を連れて出かける。今から用意をするから、起きて」
アスランの後から、女性が二人ほど寝室に入ってきた。
そういえば、昨日の夜に足に嵌められていた鎖をアスランが取っていた。
他人が入ってこの状態を見たら、どういうことがと勘ぐられる。
イザークとしては、足枷がなくなってもどうせ逃げられないのだし、たとえ逃げてもまた捕まるため、そんなことはどうでも良かった。。
イタチごっこを行うほど、イザークには体力が残されていなかった。
「彼女を頼む。俺は、19時頃にまた来るから」
「「かしこまりました」」
アスランの連れてきた女性達が、雇い主を見送ると、彼女達はなにやら準備を始めた。
「イザーク様。お出かけの準備をさせていただきますので、先にシャワーを浴びてきていただいてよろしいですか」
逆らう気もないし、髪の毛もぼさぼさだったので、イザークは言われるがままにシャワーを使った。
イザークがシャワーから出てくると、ベッドの上は布団がはがされ、小さな瓶が並べられていた。
「バスローブを脱いでこちらにうつぶせで寝ていただけますか」
下着はつけたままで、とりあえずイザークはベッドにあがった。
「ブラジャーをはずさせていただきます」
返事をする前に取られてしまい、すぐに暖かい液体がイザークの背中に垂らされる。
ここで漸く、イザークはエステを行っているのだと理解した。
オイルでのマッサージ、顔、髪の毛とあらゆる所をマッサージされ、最後にアスランの持ってきた箱を女性達があけた。
中からは、靴。それも、今までイザークが履いたことがないような、宝石がちりばめられたシルバーのヒール。
ドレスはマーメードラインのシルク。色はインディゴブルーで背中が大きく開いたデザイン。
それと、レースのストール、ブレスレッドやピアス等の宝飾品。
特にネックレスはチョーカータイプで首の後ろ側から、細いチェーンが垂れており、蝶のペンダントトップが付いている。
チョーカーをつけられた時、ガチッという何か不自然音がしたが、その時は特に気にならなかった。
久しぶりの、アスラン以外との時間は、安心をもたらすものとなり、イザークはたとえ会話は少なくても穏やかな時間を過ごすことができた。
磨き上げられる時間はあっという間に終わり、アスランがイザークを迎え来る。
彼は黒いタキシードを着ており、胸にはバラの花が飾ってあった。
「ご苦労さま」
アスランの到着を見届け、女性達はすぐに帰っていた。
「これから、俺の誕生日パーティーがある。一族総出でね。二十歳もすぎて大分経つっていうのに、しつこい」
ぶつぶつと文句を言いながら、アスランはイザークが座っているベッド際に近寄る。
「イザークには、俺のパートナーとして出席してもらう。俺のそばを離れることは許されないし…もし離れても」
イザークの目の前に、アスランがすっと何かを差し出す。
小さなボタンのついた、指輪。
「このチョーカーの後ろ。薬針が仕込んであるから、馬鹿なマネはしないように」
「っ…貴方から逃げる気力も体力も、私には無い」
「そういいつつも、今までのイザークの動きを見ているとね。さぁ、下に車を待たせている。それと、俺のことはアスランと呼ぶように。貴方じゃない。俺の名前を知らないわけではないだろう?この間、私はアスランのものですってその口で…」
イザークは先日での行為を思い出し、顔にカッと赤みがさす。
「ふっ…さっ。行くぞ」
差し出された手を、イザークは仕方なく取った。
外に出ること自体、いったいどれぐらいぶりなのだろうか。
なれないヒールと筋力の低下で、イザークは以前のように背筋を伸ばしては歩けなかった。
アスランが横に着き、腰を支える。
玄関を出ると、すぐにエレベーターホールになっており、眼下には日の堕ちた街の明かりがあった。
街並みを見て、イザークはここが自分の知っている地域だとすぐにわかった。
ここは、かつて何度か目にしたことにある、この区域の中で一番の高層マンション。
たぶん最上階か、それに近いVIP対応のフロアなのだろうとイザークはぼんやりと思った。
高速のエレベーターはすぐに地上に着き、ボーイが控えているマンションの入り口のドアを抜けると、黒い車が控えていた。
それに乗るように促され、イザークは車に乗り込む。
運転席と後ろの座席が完全に遮断されている作りの車。
「後、30分ぐらいで始まる。少し前に着く手はずになって…あぁ、外は久しぶりだからな」
アスランの説明をよそに、イザークは外ばかりを見つめていた。
見知った街並み。今通り過ぎているのは、アカデミーもある区域だ。
もう、涙など枯れ果てたと思っていたのに、イザークの目からは涙があふれる。
戻りたくて、帰りたくて、待ち焦がれた場所が目の前に広がる。
「っ!」
外ばかり見ているイザークの腕をアスランが強引に自分のほうに引く。
「その目に映すのは、俺だけでいいんだ」
車の窓のカーテンを引き、広い車の座席にイザークを押し倒す。
衝撃で、イザークの髪をまとめていた髪留めが取れ、シートには綺麗なシルバーブロンドが散らばった。
「こんなところで、何するっ…んっふ」
突然の出来事。イザークは拒む間もなく、アスランに噛み付くように唇を奪われる。
『アスラン様。もうすぐ到着いたします』
運転手からの案内が来る間。アスランはずっとイザークの唇を貪っていた。
誕生日パーティーの会場は、誰もが知っている有名ホテル。
髪の毛が乱れたイザークは、そのままでいいというアスランの言葉にしがたい、ゆるくカールがかかった髪型のままで車を降りた。
アスランにエスコートされ会場に入ると、すでに人が大勢おり、主賓の到着を待ちわびていた。
「俺から離れるなよ」
アスランは周りに聞こえないようにイザークの耳元でささやき、彼女の腰を抱いたまま会場内を歩く。
来賓客から祝いの言葉を言われ、アスランは軽く挨拶をしながら、ある人物のところまで歩いていった。
「父上。遅れまして、申し訳ありません」
「やっと来たか。遅いぞ…あぁ、そちらが」
イザークに背を向けて誰かと話していた男が、アスランの呼びかけに答えて、振り向く。
そこには、アカデミー生なら誰もが知っており、一般人だって知らない人はいないであろう、国防省長のパトリック・ザラがいた。
イザークは、アスランがパトリックの息子だと知らなかった。
アスランの苗字さえうろ覚えだった。
「ジュール女史の娘様とお聞きしている。愚息が迷惑をかけてはいまいか?」
「い…ぃぇ」
腰を抱くアスランの手に力がこもり、イザークは何も言えなくなる。
「今日は、ゆっくりしていって欲しい。アスランも彼女を放したくない気持ちはわかるが、来賓の方々にも挨拶を忘れぬような。20時には壇上での挨拶がある。それもだぞ」
「もちろん、わかっていますよ」
パトリックはイザークの手をとり、握手をすると、また来賓との話に戻っていった。
アスランが国防省長の息子。
イザークは話が段々と掴めてきた。
彼女の母親は政府の議員をしており、パトリックと面識はある。
イザーク自身も覚えは無いが、きっとどこかでアスランと出会っている。
なぜ、これほどまでにイザークに彼が執着をするのかまでは理解は出来ないが…。
しかし、イザークにとって耐え難かった陵辱は、けっして公にはならない。
いや、出来ないことであることは確かだった。
アスランの持つ権力は、イザークのものとは比べ物にはならず、イザークの母親でさえどうにでもしてしまえる。
「何か飲む?」
「…」
「イザーク、聞いてるのか?」
「あっ……ぃ…ぃぃです」
自分の未来に希望が持てなくなったイザークは、アスランの声すら耳に入ってこなかった。
そのとき、豪華な音楽とともに、ホールの中央に壇上が現れた。
司会らしきマイクを持った男性が、なにやら話を始めている。
同時に時計の鐘のようなもの鳴る。
先ほどパトリックが言っていた、アスランの壇上での挨拶が始まる時間のようだった。
「時間か…ん?」
「…わ…私、気分が」
久しぶりに歩き、しかもなれない場所に来たせいか、化粧をしていてもイザークの顔色は青白く、見るからに体調が悪そうだった。
イザークのほうから、アスランの腕をつかみ、立っているのも辛そうである。
しかし、アスランは自分の誕生日の挨拶をしなければならない。
「…あそこに、椅子があるからちょっと座ってろ」
「…ぁ」
アスランが指さすほうには、小さなソファと椅子が何脚かあり、すでに何人かの女性が座っている。
アスランは近くにいたボーイに声をかけ、イザークをそこに移動させるよう言う。
そして、彼は急いで壇上の方へと向かっていった。
『今夜は、私の誕生日に皆様…』
アスランの挨拶が始まる。
イザークは、何脚もあるうちの端にある椅子に腰掛けた。近くには窓があり、外の景色が見える。
現在いるホールは50階建てのホテルの30階にあり、外の摩天楼が一望できる。
椅子に案内してくれたボーイが同時に手渡してくれた水を飲み、イザークは外を見る。
「…どうなるんだろ」
このまま、ずっとアスランの玩具でいなければならないのだろうか。
不意にイザークの目の前に影が落ちた。
「イザ!…お前、どうして」
「…ディ…アッカ…」
聞きなれた声。ずっと、会いたかった幼馴染の姿が目の前にあった。
イザークの前にいきなり現れたのは、タキシードを着たディアッカだった。
「お前、配属先の辞令表とか出てないのに、入隊したことになってるし、一体今までどうしてたんだよ」
「ディっ…」
「おい!」
イザークは、ボロボロと泣き出し、立ち上がってディアッカにしがみついた。
ディアッカはいきなりのことで、周りを気にしたが、主賓の挨拶中ということで、この二人を気にするものは誰もいない。
「イザ?」
「話…後でするから…私のこと…ここから…ぁっ」
少しの希をかけて、イザークは振り絞った言葉はまたしても彼に届くことは無かった。
「おい、イザ?イザーク!」
イザークが急に力を無くしたように、椅子に座り込む。手に持っていたコップが落ち、絨毯の床に水の染みが広がった。
「私の秘書に何か御用でも?」
背もたれの無い椅子に意識の無い人間が座っていることなど出来るはずは無い。
イザークの体が傾いた時、支えようとしたディアッカより先に、挨拶を終わらせたアスランがイザークの体を支えた。
「あ…え?」
ディアッカの動いた手は、イザークに触れることなく宙に浮く。
「このところ激務だったのでね。少々疲れが出たようだ」
イザークを横抱きにして、アスランがディアッカにそう告げる。
「あ…秘書って…それに、こいつこんなに痩せて…」
「…学生の君には関係の無い話をしたな。失礼する」
アスランはそのまま、会場を去っていった。
ディアッカは呆然として、しばらくそのまま立ち尽くしていた。
次にイザークが目を覚ましたのは、ベッドの上だった。しかし、いつもの寝室ではない。
大きすぎるキングサイズのベッドからイザークは身を起こす。
ベッドの横には大きな窓があり、そこからは沢山の光が差し込んできていた。
「まだ、あのホテルにいるのか…」
少ししびれる体を動かして、ベッドから降りる。人工的な明かりが部屋中に差し込んで、まるでプラネタリウムのようだった。
「いい加減にあきれ返るよ」
「ぁ…」
イザークはまったく気配に気づかなかった。
彼女が後ろを振り返ると、アスランが部屋のほぼ中央にあるソファに優雅に腰掛けており、ゆっくりと立ち上がっていた。
「ぁ…あの」
アスランがゆっくりとイザークの方に歩く。イザークもじりじりと窓のほうに後ずさるが、すぐに冷たい窓ガラスが体に触れた。
恐怖と窓ガラスの冷たさで体が震え、イザークの腰が抜け、窓を背にその場に座り込む。
アスランがイザークの前まで来る。
彼は床に膝を着くと、不意に右手でイザークの後ろ髪を引き、上を向かせた。
「…またお仕置きだね…。そうだなぁ…この口で…俺を楽しませてくれ」
「え?」
アスランは空いているもう片方の左手で、イザークの唇をなぞる。
「上手く出来たら、何もしない。その口で、俺のモノを咥えて、イカせてみろ」
「っ…何を…そんなこと…」
最初はわけのわからなかったイザークも、次のアスランの言葉で意味を理解する。
顔を赤くして、首を振ろうとするが、アスランに抑えられては動かせない。
「ディアッカといったか、あの男」
「!」
イザークの顔色が変わる。
「察しのいい人間は嫌いじゃない」
アスランの口元が上がった。
イザークは膝立ちになって、立ち上がったアスランの前に身をおいた。
震える手でアスランのズボンのチャックを下ろす。
何とかしてアスランのモノを引きずりだすと、すでにそれは硬くなっていた。
「ぁ…」
アスランは無言だ。
しかし、何もしなければディアッカに危害が加わるのは、言葉として最後まで言われなくてもイザークには判っていた。
イザークは恐る恐るアスランのモノを手でつかむと、自分の口を近づけた。
あまりに大きなそれを口いっぱいに含み、イザークが舐める。
全部はとてもじゃないが口に入らないので、イザークは手も使ってなんとかアスランをイカせようと必死になった。
吐き気や味わったことの無い苦味と戦う。
飲み込めないイザークの唾液が彼女の唇から床や首元を濡らす。
しかし、アスランは息を乱すことも無く、イザークのほうが苦しさでアスランのモノから口をはずし咳き込んだ。
「ぅっ…ごほっ…っ…けほっ…っ…」
「…あぁ…残念」
アスランの声が残酷に部屋に響いた。
「いやっ…あっ…んっ」
アスランはイザークの首のチョーカーに指をかけて、強引に立たせる。
苦しさから、イザークもすぐに立ち上がる。
そして、アスランはイザークの体を反転させ、窓に押し付ける形をとらせた。
「綺麗だな」
アスランが外を見ていっているのか、否かはイザークには判らない。
しかし、アスランの手はイザークの大きく開いた背中を這い、腰から付いているチャックを下ろし始めた。
肩紐をなんとしても落とさせまいとイザークは一度抵抗したが、すぐにまた耳元でディアッカの名前を言われ、大人しく腕を下ろした。
肩紐がスルリと腕から落ち、バサッという音を立てて、ドレスが床に落ちた。
背中の大きく開いたデザインだったため、イザークは下着を下しかつけていなかった。
背中で蝶が踊る。
アスランはショーツの腰紐を解くと、イザークの左足を少し抱えた。
「ひっ…い…いきなりなっ…ぃあぁぁぁ」
前戯もなしに、アスランの体が沈み込む。
「イザークが、口で濡らしてくれたから、少しは楽だろ?」
「あぁ…っ…んっ…」
すんなりとまではいかないが、たいした痛みもなく、イザークはアスランを受け入れる。
「ほら、銜え込んで…離さないじゃないか」
「んっ…そ…そんな…あぁ…」
立ったままの行為のせいか、イザークはいつも以上にアスランの深く受け入れている。
「今日は簡単には終わらせないからな…」
「いやっ…あぁ…あぁぁぁ!」
片足だけで体重を支える体位は、今の体力の無いイザークにとってはとても辛い格好だった。
段々とイザークの体が窓を伝い落ちてくる。
「はっ…んぅ…む…むり…もっ…あぁ…くっ」
完全にイザークの体が落ちる前に、アスランは繋がったままでイザークの体を窓が邪魔をしない床に移動させ、腰だけを高く上げさせて、上から突き下ろした。
「あぁぁ…っん!…はぁ…あんっ!」
床の上での行為はイザークの意識が完全になくなるまで続けられた。
その間、アスランは一度もイザークの裡から出ることはなく、たとえ達してもまた内部で力を取り戻し、行為を続けた。
イザークも何度も絶頂を迎えては、アスランの突き上げで意識を戻され、もう何度目か判らなくなったときに気を失った。
アスラン自身もさすがに全身に汗をかき、肩で息をしていた。
「っ…」
最後にもう一度イザークの裡に吐き出すと、漸く自身を引き抜く。
ぐちゅっという音とともに、大量の精液がイザークのから流れ出た。
白濁に少し混じった赤色。
手ひどく何度も抱いたせいか、イザークの裡を傷つけてしまっていらしい。
「…傷つけたか。ごめん」
ぐったりしているイザークを抱き起こして、アスランはイザークにキスをする。
「ふっ」
アスランのささやいた言葉は謝ってはいたが、その声はどこか楽しげだった。
04:傷つけるのは本意じゃないと囁いて
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