happy


イザーク・ジュールは困り果てていた。
明日は恋人の誕生日…しかし、気性の荒い彼女はついさっき些細な事でソノ恋人と大喧嘩をしてしまったのだ。
理由は…かなりくだらない事だったのだが(イザークがただ彼とのチェスに負けただけ)、
負けず嫌いな彼女は、一回負けた後も意地になって何度も彼に挑戦した。
しかし、結果は見事に惨敗。
彼アスランも負けてやればいいものを、いかんせんこちらも負けず嫌い。
負けず嫌い同士の喧嘩は激しいもので…アスラン部屋の中は散々な事になってしまい
(イザークが勝手に一人で暴れて出て行っただけ)、一人取り残されたアスランは仕方なく部屋の片付けを始めたのだった。

廊下を歩いているイザークの表情は鬼をも射殺さんばかりで、彼女とすれ違う艦のクルー達は、必ず彼女から一歩引いた。
そんな怒りも頂点なイザ―クに、のほほ〜んとニコルが駆け寄ってきた。
「イザ―ク!!聞きましたよ」
ニコルがやってきて、イザークの綺麗な顔にまた一つ青筋が増えた。
彼女はこの年下の少年が苦手である。
可愛い顔をしているが、何を考えているのか掴めない。
アカデミー入学試験の成績は実は3番で、爆薬処理は自分よりも優れている。
頭もなかなか切れる。
「なにか用か」
機嫌が悪いと言わんばかりな口調で彼女はニコルに返答した。
廊下の温度が何度か下がっただろう。
近くにいたクルー達はその場からさっさと引き上げていった。
そんな事も気にせず、二コルはイザークに今一番言ってはいけないことを言ってしまった。

「アスランと喧嘩したんですね」

「…なんだと」
イザークのこめかみがピクッっと動いた。
「さっきアスランの部屋に行ったら、大変な事になってて…尋ねたら、
貴女がやったって言うじゃないですか。もーよりによってなんで今日喧嘩なんかするんですか」
悪びれない表情で淡々と語るニコルを、殴り飛ばさんと拳を彼女が上げた瞬間。
「明日はアスランの誕生日なのに…」
彼女の拳が、空中でピタッと止まった。
「なんだって??」
「だから、明日は10月29日でアスランの誕生日じゃないですか!」
「!?」
イザークの顔から血の気が引いてゆく、すっかり忘れていたのだ。それはもう綺麗さっぱり。
「もしかして…忘れてたなんて言いませんよねぇ」
ニコルが意地悪くイザークに問い掛ける。
「な…何をバカな事を。大体私にはそんなこと関係ない!ふん」
そう言うと、イザークは足早にその場を立ち去った。



部屋に戻って、イザークはベッドに沈み込んだ。
やってしまった。確か去年もアスランの誕生日を忘れてしまっていたような気がする。
もともと他人事には興味がない彼女だ。下手をすれば自分の誕生日だって忘れてしまう。
彼女は困ってしまった。
誕生日は明日。
でも、明日は休みで、アスランはもしかしたら誰かと約束をしてしまっているかもしれない…。
ラクスとか…ラクスとか・・・。
自分が恋人なのに…そう考えると、なんだかやるせなくなってくる。
喧嘩なんかするんじゃなかった…チェスで負けたからって大人気ない。
仮にも相手は年下で、恋人で…。
「はぁ」
冷静になって考えてみると、ばかばかしくなってきた。
だったら早く謝ればいいのだが…今更。
イザークはプライドが高い。
そのせいで、喧嘩をしても、いつも謝るのはアスランだった。
いつもだったら、すぐにやってきて、彼女のご機嫌を取るのだが、今日に限って来ない。
しかもイザークはアスランの誕生日を忘れていた。
後ろめたい。
どうせニコルがアスランに何か言いに行ったに違いない。

「あぁーどうすればいいんだ」
彼女はサラッとしたプラチナの髪を振り乱し、悶絶した。
プレゼントはもちろんない…アスランのほしい物なんかわからない。
「…そうだミゲル!」
彼女は何か思いついたらしく、2階のミゲルの部屋まで突っ走った。



ミゲルの部屋の前まで行くと、意外と礼儀正しくコールを押した。
もっと乱暴にドアと叩いたりするのかと思いきや(ディアッカの部屋だったらそうするだろう)、仮にも先輩の部屋なのだ。
そういうところは、彼女はエザリア女史からしっかりと教育を受けていた。
『はい、どちらさん』
「ミゲル!ちょっと相談がある。聞け!」
言葉遣いは教育が足りなかったようだ…。
『イザーク?ちょっと待ってな。』
ミゲルがそう言うと、シュッと彼の部屋のドアが開いた。
イザークはかって知ったるなんとやらで、部屋にはいていった。
中では部屋の住人達がなにやら作業をしていた。
「ミゲル、ラスティー…これはなんだ?」
二人してエプロンを身につけ、片手にボールをもち、もう片方の手で泡だて器(ミゲルはヘラ)を持ってなにやら料理をしている。
ラスティーは顔に白いモノをつけながら、一生懸命泡立てている。
どうやら、生クリームを作っているようだ。
ミゲルのボールの中身は黄色かった。
「…ケーキ焼くのか」
だが、何故?
疑問の目を、彼らに向ける。
「明日はアスランの誕生日だろ?俺ら忙しくてプレゼント買いに行く時間なかったから、ラスティーと協力してケーキ焼くの」
「そうそう、イザークはもちろんプレゼント用意してるんだろ?」
「ぐっ…」
イザークは息を詰めてしまった。
用意してないから、ミゲルに相談しに来たのに…。
「イザークはアスランに何あげるんだ?」
スポンジになるであろう中身を丁寧にかき混ぜながら、ミゲルは笑顔でイザークに話を振った。
「・・・・ない」
「ん?聞こえな・・・」
「何にもないんだ!!」
いきなり大声をあげたイザークに二人はびっくりして、ボールを落としそうになった。
ミゲルが、リビングのソファへ興奮したイザークを促し、ラスティーはケーキの材料を一旦冷蔵庫にしまい、
紅茶を持って戻ってきた。
イザークは紅茶を一口飲むとそれから切々と語り始めた。
今日アスランと喧嘩をしたこと、明日が彼の誕生日だと忘れていた事、プレゼントがない事…。
普段のイザークからは考えられないほど、なんだか弱々しく、女の子らしかった。
「「恋愛って偉大だ…」」と二人に思わせてしまうほど。
「もう、今日は遅いから買いにいけない。明日は休みだから…
買いに行けるけど何がほしいのかわからない。それにもう誰かと約束をしているかもしれない…」
「んーアスランの欲しいものねぇ」
「「そんなのお前だ」」と二人は大声で言ってやりたかったが。
「今から直接行って、聞いてくればいいんじゃないのか?」
ミゲルが提案した。
だが、さっき喧嘩したばかりである。
早々、行くのなんてイザークのプライドが許さない。
「そーそー。ちゃっちゃと謝って、仲直りして、明日二人でプラント降りて買い物すればいいじゃん」
二人とも簡単に言ってくれる。
それが出来れば苦労はしないのだ。
「だが…」
自分から謝ればいい事は、十分イザークもわかっている。
わかっているけど。
イザークは拳をギュッと握って俯いてしまった。
「なー悪いって思ってるんだろ?だったら、早く行ってこいよ。
自分の彼氏が誕生日に他の奴といたらイヤだろう?」
「アスランは、お前が誕生日のこと言い出すの待ってると思うなー」
「そ…そうか?」
イザークは顔を上げて二人を見る。
ミゲルもラスティーも、「大丈夫だ!!」と顔で言っていた。
行ってみるか…。
「二人とも…その・・・あ・・・ありがとう。」
イザークは御礼を言うのも恥ずかしいのか、言った後すぐに立ち上がり大急ぎで彼らの部屋を出て行った。
ようやく部屋から嵐が去った。
上手くいけばいいと思いながら、二人は作りかけのケーキを完成させるべくキッチンへ戻った。



時刻は午後11時。
一旦、自室に戻ったイザークは赤服から部屋着に着替え、謝るセリフを考えながら、アスランの部屋の前まで行った。
消灯30分前ということも有り、居室のあるこのフロアにはあまり人がいない。
もう一度、セリフを暗唱して、イザークはアスランの部屋のコールを押した。

『はい?』
たったその一言でドキドキしてしまう。
「あ…私だ」
声が震える。
『イザ?こんな時間に…今開けるからすぐ入って』
シュッとドアが開くと、イザークはゆっくりと部屋の中へ入っていった。
アレだけ汚したのに部屋は綺麗に片付いていた。

「ごめん…もうすぐ終わる」
リビングではアスランがパソコンで何か仕事をしているようだ。
まだ、赤服のままだった。
イザークはアスランが座っているソファの後ろに来て、彼の制服の背を掴んで言った。
「ふ…振り返るんじゃないぞ!その…さっきは悪かった。ごめん」
「イザ…」
「だからこっち向くな!」
イザークを見ようとしたアスランを、彼女が慌てて押し戻す。
今彼女の顔は真っ赤で、こんな顔見られたくない。
「わかった、わかったから。ちょっと落ち着けって」
「す…すまない。その…明日はお前の誕生日じゃないか。何か欲しい物があるのか?
よ…よかったら、明日の休みにプラントに降りて…買い物しないか?お前のプレゼントとか…」
声はうわずっていたが、何とかミゲル達に言われたように、アスランを誘ってみた。
だが返答がない。
しかし、アスランはひっそりと笑っていた。
「…アスラン?」
「欲しいものあるよ」
やっと返事が返ってきて、イザークは安堵した。
アスランがパソコンを片付けはじめ、イザークにソファに座るように手を差し出した。
その手を取って、彼女もアスランの隣に座った。
イザークは恥ずかしいのか、座ってからも顔が赤く、俯きぎみだった。

「な…何が欲しいんだ」
とりあえず欲しいものを聞かなくてはいけない。
それと明日は一緒に出かけられるのかも聞かなくては。
イザークが顔を上げて、アスランを見る。
そして、アスランは彼女に微笑みながら言った。
「君が欲しい」
「え」

ドサッ
そんな音が聞こえるくらい、イザークは勢い良くソファに倒れこんだ。
というか、アスランに押し倒された。
いきなりの事にイザークは思考がついていかない。
とりあえず、抵抗してはみるものの、力の差は歴然。
手を頭より高い位置で固定されてしまい、足はアスランがいるから動かせない。
「な…何考えてるんだ!退け」
「プレゼントくれるんだろ…だったらイザが欲しい」
耳元で囁かれて、イザークはビクッとした。
アスランの片手は、イザークの両手を束ねているが、もう片方の手が、
彼女の上着の隙間へと潜り込む。
冷たい手の感触にイザークが震える。
こんな性急な彼は見たことがない。
懸命に体を動かしてもびくともしない。
いくら自分が赤を着ていて、エリートと呼ばれていても、所詮は女。
力では彼に勝る事は出来ないのだ。
そして、頭脳でも…そんな自分の情けなさに、イザークは涙を流した。



「うっ…くぅ……」
イザークの泣き声で我に帰ったアスランは、戒めていた両手を解き、イザークを抱き起こした。
シャツはすべてのボタンが外され、白い下着が覗いていた。
起き上がった彼女は慌ててシャツの前をかき合わせた。
アスランを見ることも出来ず、ただイザークは泣き続けた。
「ごめん…」
優しくイザークの頭を撫でると、アスランは立ち上がってどこかに行こうとした。
それに気が付いたイザークは慌てて彼の手を掴んで引き止める。

「行くな…行くなよ…お前とこういう事するのはイヤじゃない…から」
「イザ…悪かった」
アスランは再びソファに座ると、イザークを抱きしめた。
「怒ってたんだ…ちょっとだけ、だけどね」
「誕生日忘れててごめん…喧嘩してごめん…ほんとに」
イザークは泣きながら必至にアスランにすがりついた。
行かないでほしい。
そばにいてほしい。
素直になれない、思っている事をなかなか言えないイザークがここまで言うのは珍しい。
アスランは微笑みながら、イザークの涙を唇ですくった。
「アス…」
「ごめんね…無理やり…。あんまり一生懸命に言ってるのがかわいくて。押さえ効かなかった」
「…泣いて悪かった」
「泣き顔もかわいかったよ」
しれっとアスランは言った。
「バカ!!」
しがみつく手にもう少し力を入れて、もう少しイザークは彼の胸の中にいた。

「で、明日大丈夫か」
涙を拭いてもらって、イザークはだんだんと落ち着いて、笑顔を取り戻した。
「うん、予定はないよ…でも、俺としては二人でゆっくりしたいんだけど」
「ん?」
「朝まで…一緒にいよう」
アスランはすごく真面目な顔でイザークに言った。
それがどういう意味なのか…。
イザークも真っ赤になりながらも、両手をアスランの首に回し必至に答えた。
「うん」
二人の目が合い。
唇が触れ合い。
呼吸が重なる。
想いも。

「「好きだ」」
見つめて、笑う。
生まれてきてくれて、ありがとう。





「で…電気…消して…」
ソファから、寝室へと二人は移動した。
午前12時。
10月29日だ。
艦の中は、静まりかえっている。
「それじゃ、見えないじゃないか…」
イザークをベッドに座らせて、口付けをしようとしたら、ストップをかけられた。
「じゃあ、せめて、ベッドサイドランプだけにしてくれ…恥ずかしいから」
「んー今日は俺の誕生日なんだけど…」
「うぅ…」
しかし、イザークは泣きそうなので、アスランは部屋の電気を消しに行った。
アスランの部屋は、窓から宇宙が見える形になっており、意外と星の光で明るい。
部屋の明かりを消しても、カーテンを閉めていないので、ちょっとは明るい。
「カ…カーテンも」
「もー…気にしないでいいから」
バサッと音がして、アスランが赤服の上着を脱ぎ、床に放り投げる。
制服の上着だけ、羽織っていたようで、ズボンとシャツは私服だった。
「イザ、明かりなんて気にしないで、俺だけ気にして」
「あ…うん」
アスランが、イザークをベッドに上がらせて、自分も乗る。
イザークの心臓は、壊れそうなほど高鳴っていた。
でも、今日はアスランの誕生日。
アスランは自分が欲しいと言ってくれたのだ。
それに答えたい。

「ア…アスラン」
「なに?」
「目…閉じて」
二人して、向かい合って正座。
なんともおかしい状態。
「わかった」
アスランが目を瞑り、イザークは、初めて自分から彼にキスをした。
最初は触れるだけで、すぐ離れるが、次はアスランの下唇を自分の舌でペロッと舐めてみる。
自分は目を開けているので、なんだか変な感じだと思っていて、
再度キスをしようとしたら、思いっきりアスランと目が合ってしまい、イザークは慌てて、布団に突っ伏した。
目閉じてろっていったのに!!!
「イ、イザーク?」
「目…閉じてろって、言った!!」
密かに顔を上げると、暗がりでもわかるほど、真っ赤。
「ごめん…なかなか次が来ないから、気になって」
「…」
「じゃあ、今度は俺からかな?」
枕を抱えているイザークから、枕を取り上げて、横たわったままの彼女の上にアスランは覆いかぶさる。
イザークも、横向きを直して、仰向けになったが、恥ずかしくて顔は隠したままだ。
その、綺麗な顔を隠している手を、アスランは優しく移動させる。
案の定茹蛸のような顔が出てきて、思わずアスランは笑った。
「笑うな!!」
コッチは一生懸命なのに…。
「俺だって、久しぶりだから緊張してるのに…それ以上だから。でも」

「じきに、何も考えられなくなるからね?」
不敵な笑み。



上からアスランの顔が降りてきて、イザークは静かに目を閉じた。
アスランが舌で、イザークの唇を突く。
イザークは薄く、唇を開けると、アスランの手が顎に伸びて、もう少し唇が開いた。
それを見計って、アスランの舌が彼女の中に入ってくる。
湿った音。
静寂の中に、それだけが響き渡って、イザークはアスランのシャツの袖を掴んだ。
「ん…はぁ…んぅぅ」
息継ぎをするタイミングを与えながら、アスランはイザークの口腔を味わう。
イザークも最後は、自分からアスランの舌に自分物を絡めた。

「はぁ…はぁ…」
「キスするのも…久しぶりだから、ちょっと調子に乗っちゃったね」
イザークは息を上げてしまい、アスランは一端イザークの上から退いた。
その間に、自分の来ていたシャツを脱ぐ。
見事なバランスの取れた上半身。男だったら、誰もが憧れるだろう。
そんなことを思いながら見ていたら、アスランが、上半身裸でベッドに戻ってきた。
「プレゼント…貰っていいんだよね?」
イザークを座らせて、聞く。
「あぁ…」
コクコクとイザークは頷いた。
「ありがとう」
イザークの瞼に。アスランの唇が触れた。

「んぅぅ!!はぁ…アス…ラン!!!」
アスランが、イザークの足を持ち上げて、入ってくる。
イザークの顔が痛みで歪み、背中がしなる。
行き場のない手が、シーツを掴む。それにアスランが気付く。
「ごめん…痛い?」
アスランも余裕がないのだが、それ以上にイザークは余裕がないらしく、目には涙を浮かべている。
「だ…大丈夫…」
それは嘘。本当は、久しぶりで痛くて恥ずかしくて、でも気持ちがよくてどうしたらいいのか判らない。
「辛かったら、爪たてていいから…」
一端アスランはイザークの中にすべてを埋め込み、動きを止める。
そして、イザークの手を自分の背中に回させた。
「んぅはぁ!」
「手…背中回して?」
「うん…」
アスランに言われて、イザークは背中に手を回した。
「じゃあ…動くよ。俺も辛い」
言うが早いか、動くが早いか。
アスランはイザークの膝裏を抱えなおし、動き出した。
「はぁん…うぅん…い…あぁ」
「イザ、力抜いて…きつい」
イザークの締め付けで、アスランの顔も歪む。
「ごめ…んぅ」
少しでも気が散らせるなら、アスランはイザークにキスをする。
舌を絡ませて、イザークの意識をこちらに集中させる。
緊張が緩んだ瞬間を見計って、アスランが最奥を突く。
「んぅ…はぁ…あぁぁ!!」
「イクよ…」
「うっん…」
ラストスパートとばかりに、アスランが動きを早める。
それについていくのが精一杯のイザークだが、一生懸命アスランにしがみつく。
「あぁ…アス…もうダメ」
「俺も…」
達しそうになる前に、イザークはアスランの頭を抱え込み、耳元に唇を寄せた。
「生まれてきてくれてありがとう」
イザークは、目に大粒の涙を溜めて、そういった。
「イザ…」
「はぁ…ダ…メ…もう。い…あぁぁぁ」
ビクンッとイザークの腰が跳ねて、アスランの背中に爪を立てながら先に達する。
「くっ…」
達したことで、締め付けがさらに強まり、アスランもイザークの中に吐き出した。
この後も、お互いの温もりを感じながら、一晩中求め続けた。



「もう昼だぜ?」
誕生日の昼になっても起きてこないアスランとイザーク。
大体何をしているのかは判っているミゲルだが、こちらも折角誕生日のケーキを作ったのだ。
早く渡したい。
「仲直りして、お熱いんだろ?」
一緒にいるラスティーには、どうしてミゲルがケーキを今渡したがっているのかわからない。
ミゲルとしては、野次馬根性も働き、その上お節介なのでどうしても二人が気になるのだ。
特に、イザークは彼にとって、妹みたいなものだから。
自分を頼って、相談に来たりする彼女は、兄妹のいない自分にとっては本当に可愛い。
たとえ、鉄拳制裁をくらってもだ。
「開けてみるか?」
アスランの部屋の前。
ミゲルが言う。
今日は、クルーゼ隊全員が非番なので、ミゲルはぶっちゃけ暇でもあった。
「えー…止めようぜ」
この場合、イザークよりも、アスランの方が怖い。
ラスティーだって、二人が何をしていたのかぐらいわかっているし、別にそれを見たいとは思わない。
「緊急用のロックナンバーを…よし!」
「うわ、ミゲル何やって」
非常用のナンバーを入力し、ミゲルがアスランの部屋のロックを解除した。
「大丈夫だって…さすがに服は着てんだろ?」
「問題はそこかよ!!」
「いいから、いいから、行くぞ」
アスランばかりいい思いして、ずるいからな。

中に入ると、リビングには誰もいない。
仕事に漬かっていたと思われる端末は電源こそ切れているものの、開けっ放し。
そして、寝室のドアも開けっ放しだ。
「…あいつら、そのままなだれ込んだな?」
色々物色して、ミゲルがついに禁断の地へと足を踏み込もうとする。
「ヤバイって!!止めようよ」
「じゃ、お前はここにいろ」
情けない声をだす、ラスティーに一喝して、ミゲルは中に入っていった。
「俺…知らないよ」

部屋の電気は消してあるので、中は薄暗いが、カーテンはまたも開けっ放しなので、
中の様子は大体わかる。
ベッドに包まるように眠る多分イザーク。
そして…
「何か用?ミゲル」
「あら…起きてたの?」
かろうじてズボンははいているアスランが、ミゲルの足音で起きてしまった。
「イザまだ寝てるから…てーか、何でいるの」
うわ…極悪ズラね。
寝起きのようで、かなり機嫌が悪いようだ。
いや、ミゲルが来なければ、アスランはイザークが起きるまで
布団のなかで彼女の顔を見ていられたのに。
「いつまでたっても起きてこないから」
ケーキ作ったんだ〜と、ミゲルは笑いながら言う。
しかし、その笑い声で…。
「…ううん?アスラン」

イザークが起きてしまったようだ。
ゆっくり起き上がると、肩から掛かっていた布団がシュルリと落ちた。
きれいな背中が目に入る。
ヒュッ〜ウ
ミゲルが口笛を吹いた。
「ん…アス?」
「イザークこっち向くな!!」
アスランが、慌てて床に落ちていた、自分の赤服の制服をイザークに向かって放り投げる。
「やった後は、服は着せてやれよ?じゃーな」

「ミゲルゥゥゥ!!!!」
外で待っていたラスティーはリビングにケーキを置いて、すでにいない。
ミゲルは逃げるように、アスランの部屋から出て行った。
アスランの怒り声が部屋に響き渡った。
幸せは、どうやら長くは続かない。




END
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