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春めく陽気。
今年は桜がまだ散らずに、残る。
ここは国が設立した大学。
今日は、この大学の入学式が執り行われる日である。
正門をくぐるとまっすぐに伸びる並木道。
その突き当たりには、この大学の初代学長である、名誉教授の名が刻ませた大講堂がある。
今日の入学式はこの大講堂で行われる。
並木道では、真新しいスーツに身を包んだ新入生たちが、先輩たちのサークル勧誘に答えながら、みな大講堂を目指していた。
そんな並木道に面した大学校舎2階の窓に2人の人影があった。
「やっぱり、若いよね。10代だもんね」
茶色い髪の毛に大きな紫の瞳。
人懐っこそうな笑みを浮かべて、新入生を眺めているのは、工学部3年のキラ・ヤマト。
「親父くさいぞ」
その発言に、突っ込みを入れているのは、キラと同じく工学部3年のアスラン・ザラだ。
紺色の髪にエメラルドの瞳。
キラよりはニヒルな感じの笑みを浮かべでるその様は、近寄りがたい高貴な雰囲気が漂う。
「あ、シンちゃん発見!ほら、アスラン」
キラが、誰か知り合いを発見したようで、並木道の人を指差す。
「レイのか…」
レイというのは、この二人の所属するサークルの後輩である。
シンというのは、そのレイの彼女だ。
どうやら、この大学に無事に入学できたようだ。(レイは、シンの出来が悪くてかなり四苦八苦していた)
写真で見せてもらった彼女は幼い印象があったが、今日は化粧をしているのだろう。
スーツも手伝って、ずいぶん大人びて見える。
だが、それよりも目を引く人間をアスランが見つけた。
しかしそれはキラも同じだったようで、二人で声がそろう。
「「あっ!」」
二人して、同じ人間を指差す。
その先には、銀色の長い髪を風になびかせて、シンの横で笑う一人の女の子がいた。
「どうして、かぶるかなぁ」
キラが、アスランを嫌そうな目で見る。
「それは、俺も同じ。まったく」
アスランも頭を掻いて、キラと同じように嫌そうな表情をしている。
この二人は、生まれたときから一緒に育ったようなものだったので、何かと好みが似るのだ。
大学の学部もそうだし、趣味も似ている。
「しかし、美人だなぁ…でも、ああゆうタイプに限ってすごい純情なんだよね」
「そうだな、からかいがいがある」
くすくすと二人で笑っていると、先ほど話題にのぼっていたレイことレイ・ザ・バレルが二人の下にやってきた。
この部屋は、3人が所属するサークルの部室だ。
「先輩たち、俺だけに勧誘させるつもりですか?」
もともと無口なレイは人に話しかけたりするのがものすごく苦手だ。
なので、とても勧誘なんてできないとわかっていて、この二人は面白半分で勧誘作業をレイに任せていた。
レイは、金髪のストレートヘアで、まるで容姿は本から抜け出した王子様のようだ。
そこにいれば、女の子たちが集まるだろうとも二人は考えていたが、むしろ近寄りがたかったようだ。
「収穫は?」
どうせ、いないだろうと知りつつ、アスランが聞く。
「いませんよ、たぶんシンは俺にくっついて入るでしょうが…」
「そうだね、。あ、ねーレイ。あの子知ってる??」
ずっと窓の外を見ていたキラがようやく振り返る。
「誰です??」
レイが窓に近づいていき、キラの指差す人間を確認する。
「ほら、君の彼女の横にいる、銀色の髪の美人さん」
キラが指差す方向には、自分の彼女であるシンと一緒に、高校時代の後輩、イザーク・ジュールの姿があった。
「俺の高校の後輩ですよ」
「じゃあ知り合いなんだ、しかもシンちゃんの隣にいるってことは…友達同士?」
「親友です」
キラは、ラッキーと言わんばかりに指をパチンと鳴らした。
「そうか、じゃあレイ。彼女を打ちのサークルに入部させてくれ。これ、命令」
アスランが、ビシッとレイを指差して命令する。
ちなみに彼がサークルの部長であった。
「はぁ、わかりました」
またよからぬことを考えているなとレイは思いつつ、この二人に逆らうと痛い目を見ることはわかりきっているので、
二つ返事で了解する。
「じゃあ、早速シンのところに行ってきます」
「がんばってね〜」
キラに元気よく送り出されて、レイはシンの元へと向かった。
ただいまの時刻は、午前九時。
大講堂での式は九時半からの予定なので、イザークとシンはまだ講堂に入らずに外で話をしていた。
「ほんと、ほんと!!入れると思って無かったよーー」
おお喜びしているのは、さっきも話題に上っていた人間の一人。
レイの恋人シン・アスカである。
お世辞にも頭が良いとはあまりいえない彼女は、恋人とそして大親友と同じ大学に行くべく猛勉強をしたのだ。
回りからは、お前が国立大学に入れるわけが無い、やめろと散々言われたが、
大親友と彼氏が根気欲勉強に付き合ってくれたので、補欠だったが入学することができた。
「私もだ、でもこれがお前の実力なんだ。やればできるって証明できてよかったな」
イザークは、頭を撫でてシンをほめてやる。
「うんうん、あー早くレイと会いたいなぁ」
「今日は、先輩来てるんだろ?」
「入学式前に顔出すって言ってた…あ、いた。レイ!」
並木道横の校舎から出てきたレイをシンが見つけて、手を振る。
それにレイが気づいて、駆け寄ってきた。
「シン」
レイはシンたちの所まで行くと、シンの頭をイザークと同じようにそっと撫でた。
「よかったな、おめでとう。イザークも…」
「はい、ありがとうございます。3年間またよろしくおねがいします」
「へへ、レイぃ」
きちんと挨拶するイザークとは対照的にシンはレイに抱きついた。
「…まったく」
レイも口では嫌がっていても、さりげなくシンの背中に腕を回している。
結局のところ、相思相愛なのだ。
「そうだ、シン、イザーク。話があるんだが…まだ、時間大丈夫か?」
やさしくシンを自分から離して、レイがさっきのことを切り出す。
「っと、すみません、私はもう行かないと」
「あ、そうだね。なるべくわかりやすいところに座っておく」
「じゃあ、先輩失礼します」
後でね〜とシンが手を振って、イザークを見送った。
「イザークは何かあるのか?」
「新入生代表挨拶の原稿もらうんだって…やっぱりイザってすごいよね」
「あぁ…で、話なんだが、式が終わったら今日はもう終わりだろ?サークルの部室に案内してやるから、
お前イザーク連れて、大講堂の入り口で待ってろ」
レイが腕時計を見ると、もう式開始まで10分しかない。
そろそろシンを大講堂の中に入れないといけないので、話を切り出す。
「うん!行く。イザ同じところに入ってくれるかなぁ…」
「まぁ、話を聞いて決めればいい。じゃあ、早く行かないと遅れる」
手を振って、シンは講堂の中に入っていった。
それを見届けて、レイはアスランとキラの待つサークル室と戻った。
「普段無口なのに、シンちゃんの前では違うんだねぇ」
帰ってくるなり、まだ窓際にいたキラのそんな言葉。
「見てたんですか…いいじゃないですか、別に。後で迎えに行くことになりました」
むすっとして、部屋にあるソファに座る。
この部屋にはソファが2脚、コンピューターが3台とそのデスク。
そのほか、ポットや食器を置く棚や冷蔵庫に電子レンジ。
かなり充実したつくりになっている。
レイが戻ると、アスランはパソコンで何かしていて、キラはまだ窓の外を見ていた。
「そっか、楽しみ。あー…喉渇いた。アスラン、レイ何か飲む?淹れるよ」
「俺、アイスティー」
アスランが、そう答える。
パソコンにかじりついていたと思ったら、ちゃんと聞いているところはさすがだ。
「俺が淹れましょうか?」
「いいよ、勧誘とか疲れたでしょ?ソファに座ってなよ」
キラは窓際に持っていった、パソコンデスク用の椅子を片付けて、冷蔵庫を漁る。
「皆、アイスティーね」
キラは、うきうきしながら、アイスティーのパックを取り出して、コップに注いだ。
「お疲れ、どうだった入学式は」
がやがやと大勢の新入学生が大講堂から出てくる。
式が終わる前からレイは彼女たちを待った。
「レイ!すごかったよ〜イザかっこよくて」
レイを見つけるなり、シンはイザークの手をとって、レイの元へかけっていった。
「イザークはああいうの得意だよな。高校のときも弁論大会とか出てたし」
レイが高校時代にイザークがリベートの全国大会に出たときの事を思い出した。
シンと一緒に決勝戦を見に行ったのだ。
「いえ、ああいうのはやはり緊張します」
「でも、皆釘付けだったよ〜イザ美人だし。へへ、自慢できる」
「ありがと」
イザークがまたシンの頭を撫でる。
シンは、頭を撫でてもらうのが好きだった。
イザークの手は優しくて暖かいし、レイも同じなのだ。
「じゃあ、シン、行くぞ。イザークも悪いが、付き合ってくれ」
「かまいませんよ。先輩がどんな活動してるのか気になりますから」
イザークとシンはレイの後について、並木道の横にあるサークル会館に入っていった。
「ここだ、さぁどうぞ」
レイがドアを開けてくれて、二人は失礼しますと部室に入っていった。
中では、ソファにアスランが。
ソファの後ろに、パソコンデスクの椅子を持ってきてその背もたれに両肘をかけて座るキラの姿。
「あ、キラさん!」
「やぁ、シンちゃん。覚えててくれたの?まぁ座って。レイ、飲み物お願いね」
キラが人懐っこい笑みを浮かべて、二人に手招きする。
「シンは、オレンジジュースでいいか?イザークは…ブラックのホット?アイス?」
「うん!」
「じゃあ、アイスで。すみません」
レイに飲み物をたのんで、イザークとシンはソファに座った。
「僕は、ここのサークルの副部長のキラ・ヤマト。工学部の3年です。でこっちが」
「部長のアスラン・ザラだ。学部はキラ同じ、よろしく」
「シン・アスカです」
「イザーク・ジュールです、私たちは二人とも文学部です」
それぞれが挨拶をする。
「実は、このサークルは大半が去年の4年生で構成されてて、皆卒業してしまったんだ。
なので、人手が足りないし、うちの大学は最低5人いないとサークルとしては成立しない。
で…単刀直入に言うと、入って欲しいんだ」
アスランが、入部希望の書類をソファの前にあるテーブルに、二枚おいた。
「シンちゃんは、入るんでしょ?」
「はい、レイがいるし…でも、イザは」
「あーまぁ、ほかのところで見たいところも無いけど…でも、なにやってるんですか?」
いきなり入ってくれと言っても、何をしているのかわからなければ、入りようも無い。
「ロボットを作ってるんだ」
レイがジュースとアイスコーヒーを持って戻ってきて、ちょっと説明をする。
彼女たちの前において、そしてアスランとキラにもコーヒー(キラはミルクと砂糖をたっぷり入れないと飲めない)
を差し出し、自分はアスランの横に座った。
「「ロボット?」」
「遺跡発掘用の、小型ロボット。俺たちは、学校側から資金をもらって活動してる。
結構しっかりとした活動をしてるんだ。そのために、文献を読んだり、その遺跡に行ったりしないといけない。
俺たちは理数系だからもっぱら、ロボット製作中心だけど、君たち文学部なんだろ?文献購読とか…興味ない?」
アスランが部の詳細を説明する。
結構大掛かりなことをやっている部だったので、イザークとシンは驚いた。
「へぇ…すごいんですね」
「文献ですか…シンは本読むのは好きだよね」
シンは、勉強はあまり得意ではないが、本を読むのがすごく好きだった。
それはイザークの影響でもあるけれど、記憶力も本に関してはすごくいい。
「うん、でもイザだって好きでしょ?それに遺跡だって。イザ歴史好きじゃん」
「まぁ」
どっちにしても、二人とも本好きということには変わりは無い。
「じゃあ、いいんじゃない??楽しいよ〜入ろうよ」
キラが勧誘する。
「イザ…どうする?」
「うーん」
文献を読めるのは魅力的だし、遺跡にはものすごく行ってみたい。
シンとは離れたくないし…どうせ、シンはこのサークルに入るだろうし。
どうする?とイザークのスーツの袖をつかむ彼女の目は入ろうよ〜と言っている。
「ねーイザぁ」
「わかった。わかりました。じゃあ…よろしくお願いします」
イザークは、アスランやキラに頭を下げた。
それに続いて、シンも「お願いします」と頭を下げる。
その瞬間に、キラとアスランがにっこりと笑ったのを見るものは、誰もいなかった。
数ヵ月後。
イザークたちは大学にも慣れて、サークル活動にも慣れていった。
サークルは結局ほかに部員が入らず、5人での活動となった。
7月の前期定期試験が終わった後すぐに遺跡見学に行くために、5人は忙しくしていた。
イザークとシンは授業の合間をぬって、サークル室に顔をだして、読んだ遺跡の文献の話をした。
アスランとキラはロボットの組み立て、レイもそれを手伝ったり、設計の計算をしなおしたりした。
イザークは数学も得意なので、レイの手伝いをし、シンは手先が器用なので組み立てを手伝った。
仲間として打ち解けるのに時間もかからず、5人は仲良く活動をしていった。
6月下旬ごろにようやくめどが立ち、7月の試験前には忙しさから開放され、勉強に専念できる状況になった。
シンだけがテストに四苦八苦していたが、イザークのおかげで追試もなさそうだし、
夏休みのレポートも少ないので、有意義な夏休みになりそうだ。
試験週間の最終日に5人はサークル室にあつまった。
今回見学に行く遺跡の資料と日程をアスランから告げられる。
「明後日、10時に大学正門集合。で、遺跡へ行き見学とビデオカメラでの撮影。
許可はもらってるから、今回作ったロボットを試運転して、記録をとる。
その後は、俺の家の別荘に行って、まぁお疲れ様会。一泊二日でちょっと強行だけど、がんばろう」
それぞれの役割分担も決めて、遺跡までは車で行くことになった。
車はレイが用意して、運転はレイ・アスラン・キラのローテーション。
昼食は、シンとイザークが用意して、夕飯は別荘の近くにレストランがあるのでそこでとる。
朝食は、別荘の管理人さんが作ってくれるようだ。
前日、シンはイザークの家に泊まって、当日二人は朝早く起きて、昼食のお弁当作りにいそしんだ。
イザークはどちらかというと洋食が得意なので、サンドイッチやそれと合う付け合せを。
シンは、和食好きなので、いろいろな種類のおにぎりや煮物、出汁まき卵を作った。
お弁当と自分達の旅行かばんを持って、家を出ようとしたら、シンの携帯電話が鳴った。
相手はレイでこれから迎えに行くので待っているようにということだった。
荷物が重いと思ったのだろうか、先に迎えに来てくれたのだ。
レイに荷物を車の一番後ろにおいてもらい、シンは乗りなれた助手席に、イザークは後ろのシートに乗った。
レイの所持する車は顔に似合わず、大型のワゴン車だ。
「キラさんとアスランさんは?」
車を走らせると、シンが聞く。
「まだ、大学にいる」
あの二人は、先に大学で、ロボットを頑丈な箱に詰めてる。
時間かかりそうだから、迎えにいったらどうだといわれたようだ。
大学に着くと、少し大きめの箱を横にバックを持ったキラとアスランが待っていた。
正門の端に車を止めて、レイが後ろを開ける。
箱は壊れるとまずいので、一番後ろのシートに乗せた。
全部乗せたのを確認して、最後にレイが運転席に乗って、いよいよ出発となった。
遺跡までは約4時間の長旅だ。
途中何度か休憩を取って、遺跡に付いたのは午後1時過ぎ。
平日だったこともあり、道が空いていたので、休憩をとってもこの時間に着くことができた。
まず、腹ごしらえをかねて、イザークとシンが作ってきた昼食を食べる。
「へぇ、二人で作ったの?美味いね〜」
キラが感心したように、お弁当を平らげていく。
レイは二人の料理は食べなれているが、天気のいいそして外で食べるのはさらにおいしく感じる。
「あぁ…意外だな」
「それ、失礼です!」
「こら、シン…」
少しむくれたシンがアスランに言う。
そこに、仲裁に入るように、イザークがシンをやさしく咎める。
「悪い…美味いよ」
楽しい食事が終わると、いよいよ遺跡の中に入る。
管理者に書類を渡し、中に入る。
そこまで大きくは無いが、どうやら壁画があるらしい。
入り口は小さいため、早速ロボットを組み立てる。
イザークやアスラン、レイが組み立てている間、イザークがビデオカメラの準備をして、
シンはカメラで遺跡の外観を写真に収めた。
ロボットの組み立てが終わると、アスランがそれの先端に超小型の赤外線カメラを取り付け、小さな入り口から入れる。
コントロールは、すべてパソコンとコントロール用のリモコンで行う。
内部にロボットが入るとすぐにパソコンに中の映像が入ってくる。
キラが、それを見ながらゆっくりと操作した。
レイとアスラン、そしてイザークとシンはそれを見守った。
1時間かけて、内部の様子を観察し、ロボットのバッテリーが切れる直前で内部から出す。
欠点はどうやら燃料の燃費にありそうだ。
「映像は、まぁまぁだな…あとは、燃料か」
パソコンで映像を再度確認しながら、アスランが言う。
「そうだね、今回はアルカリだったから…でも結構持ったほうだと思うよ?」
「リチウムだったら、でも…」
キラやシンが充電器について語り合うが、そこらへんはイザークとキラはわからないので、話にははいていけない。
「シン、写真は撮れたの?」
電池トークに花が咲いている男子達から離れて、イザークとシンが話しをする。
「うん!見てみて〜」
シンがレイから借りたデジタルカメラをイザークに見せる。
「綺麗に取れてる…でも、レイ先輩の写真は要らないよ…」
「…へへっ。だって、ほしかったんだもん!!」
付き合って、3年以上経っているはずなのに、いまさらなことをシンが言う。
でも、そこも可愛らしいのでなぜだか許せてしまう。
「プリントして、部屋に飾るんだ」
「はいはい」
仲良く話している所に、アスランの声が響く。
どうやらもう話が済んだらしく、一度機材を置きに別荘へ帰るらしい。
「…大きいお屋敷ですね」
「そうかな?」
「アスランの実家のほうが、大きいよね」
レイの車に乗り込んで、車で1時間程度のところにあるアスランの別荘へ向かう。
着いたところには、お城のようなお屋敷があった。
イザークがあまりの大きさに少々引く。
だが、レイやシンもかなりの金持ちの子息なので、あまり驚きはしていない。
イザークの家も、それなりの大きさがある。
しかし、その比ではなかった。
「まぁまぁ、坊ちゃまお久しぶりです」
荷物を持って屋敷の玄関を開けると、中では管理人である中年の女性が待っていた。
「お久しぶりです。でもすぐに出ますので…これから、夕食をとりに行くので、
その前に荷物を置いていこうとおもいまして」
「そうだったのですか、実は夕食をご用意しようと思っているのですが…どうですか?
これから車を走らせるのも大変でしょう?研究でお疲れなんじゃないのですか?」
「あぁ、そうですね。じゃあ、お言葉に甘えて…みんないいか?」
皆コクコクとうなずいて、それぞれ部屋に案内された。
一人一室のはずだったが、シンはどうしてもイザークと同じ部屋がよかったので、ツインの部屋を用意してもらった。
部屋に荷物を置いた後、温泉があるというので、先に入っていいよというアスランの好意を受けて、
イザークはシンと一緒にお風呂に入る。
お風呂を出た後、ちょうど良いタイミングで夕食の声がかかる。
ダイニングに下りていくと、とても豪華な夕食が用意されていて、その料理を皆で味わった。
夕食が終わり、今度はレイやアスラン、キラが温泉に入る。
彼らが、出終わったあと、ちょっとした反省会が開かれた。
管理人が気を利かせて、おつまみやアルコールを用意してくれた。
シンは酒には弱いが、酒好きで、イザークはあまりアルコールは好きじゃないが、かなりのザルだ。
今日の遺跡の見学の話をしながら、アスランやキラ、レイはビール。
シンとイザークは、アルコール度の低い果実酒を飲んだ。
話は弾み、これからの予定や今度のロボットの構想を話した。
しかし、だんだんとシンに酔いが回ってくる。
「シン…大丈夫か??」
「う?…うん、平気」
顔には出ないが、目がかなり据わっているので、結構酔っているのだろう。
「レイ先輩…あの、お願いします」
そろそろ寝かせておかないと、シンはいきなり笑い出したり、踊りだしたりする。
以前、高校の卒業式の後、レイの家でお祝い会を開いてもらったときもシンが飲みすぎて、
大変なことになったことがあった。
シンは寝室に戻る事を拒んだが、レイに言われてしぶしぶ部屋に戻った。
そして、一人で帰って途中で倒れたりしたら危ない。
レイも今日は疲れたということで、シンをおいたら、そのまま自分の部屋に戻るといって出て行った。
「シンちゃんって面白いなぁ…」
キラがくすくす笑う。
「あのままほって置くと、大変なんです」
「それにしても、イザークは酒強いんだな…果実酒もいいが…カクテルで美味いのがあるけど、
飲むか?作ってくるぞ?」
シンとは違い、ザルなイザークはかなり飲んでいても顔色ひとつ変化しない。
「あー、僕も飲みたい!!カシス、カシスのがいい」
「イザークは??まだいけるだろ?つまみも持ってくるし、キラと同じのでいいか?」
「じゃあ…はい」
キラがウインクをして、「じゃあ、よろしくね」とアスランを見送ると、
アスランも頷いて宴会をしていたゲストルームを出て行った。
「レイはシンちゃんにべた惚れなんだね。普段無口なくせに、あの子の前だとデレデレ」
残っていたビールを流し込んで、おつまみのクラッカーを食べながら、キラが言う。
「はい。幼馴染なんですよあの二人。私は、中学からの友人ですが…シンが可愛くてしょうがないんでしょう。
私も、シンは可愛いと思います。ほっとけないし、一緒にいて楽しいし」
「でも、僕らはイザークの方が好きだけど?」
「はい?」
いま、さりげなく言われたが、別にキラの表情は変わっていない。
またおつまみに手を伸ばして、ポリポリと食べだす。
酔いが回っているのだろう、キラの顔はほんのり赤い。
「イザーク、兄弟は?」
ガラリと話がかわったので、イザークはやはり酔っていたと判断した。
「いませんよ、一人っ子です」
「ふーん、僕はね、双子の姉がいるよ、あとアスランとは生まれたときから一緒だから、
兄弟みたいなもんなんだよね」
「へぇ、双子なんですか」
「そう、うるさいし、大変だよ。あとは、アスラン!レイとシン見たいに綺麗なもんじゃないんだよ〜
男同士だと、欲しいものとかかぶるし、分けられればいいんだけどね」
ぽつりぽつりと、自分達の話をしていると、アスランが3人分のカクテルを持って戻ってくる。
それからカクテルを飲んで、ちょっとまた話をして宴会はお開きになった。
アスランはこの別荘に自分の部屋があるらしくそこに泊まる。
キラはその横の部屋のようだ。
かなりの数の客室があるし、3階建てなので、迷子になりそうだ。
なので、イザークとシンは玄関から一番近いツインの客室を用意してもらった。
しかし、この場所からは結構遠い。
部屋の前に着くと、うっすらとドアが開いていた。
「ん?…シン開けっぱな…っ」
シンしかいないはずの部屋から声が聞こえる。
「っ…シン!」
「レイっ…レイ!!もっと、もっとちょうだい」
ぎしぎしとベッドが鳴る音。
「んぁ、レイ、好き…大好き…はっ…あぁん」
シンのあえぎ声が聞こえる。
イザークは気づかれないように、そっと部屋のドアを閉めた。
「…レイ先輩帰らなかったのか」
現状をすぐに理解して、はぁ、とイザークがため息をつく。
イザークは仕方が無いのでどこかの別の部屋を探すことにした。
近くの部屋にすると、彼らの声が聞こえて眠れないと困るので、少し離れたところまで移動する。
しかし、数メートル歩くと、イザークの体に異変が起きた。
いきなり、背中を熱いものが駆け抜けたのだ、目の奥が熱くて、足がいきなりガクガクする。
「なに…」
これ以上歩けなくて、その場にしゃがみこむ。
「イザーク…ここにいたの?探したよ」
「アスラ…ンせんぱい?」
「…」
アスランは無言でイザークに近寄り、彼女を抱き上げた。
「なにして…先輩??」
「大丈夫…熱いんだろ。俺達が助けてあげるよ。イザーク」
抱き上げられて、耳元でささやかれる。
やさしすぎる声。
その声すら、体を駆け抜ける炎と化す。
何がなんだか、理解できない。
でも、これだけはわかる。
きっとこの、熱さを取り除けるのは、この人達だけなんだということ。
自分がどうがんばっても、きっとこの熱は冷めないのだ。
結構な距離を移動して、アスランは明らかにほかの部屋と扉のつくりが違う部屋の前にたどり着く。
此処がこの別荘での彼の自室なのだ。
ドアが微かに開いていて、アスランは足でそれを開ける。
中へ入り、イザークはそのまま、キングサイズのベッドへと下ろされた。
「待ってたよ、イザーク」
キラがビデオカメラをいじりながら、ベッドの横にあるソファに座っている。
アスランは、部屋のドアを閉め、鍵をかけて戻ってくる。
「僕言ったよね、僕達、君が好きだよって」
キラがカメラのメモリをセットして、レンズをイザークに向ける。
「まったく、欲しいものが被ると困るが…俺も譲れないし」
アスランは着ていたジャケットを脱ぎ捨てて、ベッドにあがった。
キラはソファに座りながら、カメラを回す。
「イザーク熱いだろ?…俺達が、助けてやるよ」
「い…嫌です。触らない…あっ」
アスランがゆっくりとイザークの上着に手をかけて、ボタンをひとつずつはずす。
服の上から触られるのでさえ、イザークは敏感に反応した。
風呂に入ったので、石鹸のいいにおいがした。
「キスはだめだよアスラン!キスマークもね」
「はいはい…わかってるよ」
「なに、考えてるんですか!…まさか、まさかですよね」
イザークの顔が青ざめる。
何とか逃げ出したい。
しかし、体が熱すぎて、恐怖よりもどうにかしてもらいたい気持ちのほうが勝る。
「熱いだろ?即効性じゃない分、効きだすと長い」
「なにが…?」
「薬だよ、もー早くしてよアスラン。待ってるのにも限界があるしぃ」
ボタンを押す音がして、キラが本格的にビデオカメラを構えだした。
録画する気だ。
「なに、撮って…いや、アス…先輩、脱がせない…で」
「脱がさないと、できないだろ?」
アスランは着々とベッドに横たえたイザークの上着を脱がし、ブラのフロントホックに手をかける。
「動くと、その分熱くなる。お前を傷つけたいわけじゃない。俺達は、イザークが好きなだけだ」
パチンと音がして、ホックがはずれ、イザークの形のよい胸が現れる。
その胸にアスランが顔を寄せ、唇でその輪郭を確かめるようになぞる。
「っ…ぁん」
「好きだ…イザーク」
いきなりそんなことを言われてもこまる。
しかも、順序が逆なのだ。
でも、どうしてかイザークは拒めない。
自分も気になっていたのか。
でも、どっちを??
急におとなしくなった、イザークの顔をアスランが覗き込む。
「俺達の気持ち…わかってくれるのか?」
「わかりません、でも、熱いし…あと、先輩達のことは嫌いじゃないんです、いきなりだけど」
潤んだ瞳でイザークはアスランを見つめた。
「いいよ、今はそれで。イザークは感じるだけでいい」
アスランはまた行為を開始した。
「イザークの中、もうやけどしそうなくらい熱い」
イザークの服を全部脱がせ、アスランはイザークの足を広げると中に指を入れる。
もうそこは十分過ぎるほど潤っていて、アスランの指とシーツをぬらした。
ぐちゅっという音が、キラの耳にも入る。
「はぁぅ…おと…いやぁ」
「すごい…これなら、そんな慣らす必要もなさそうだな。イザーク入れるぞ」
一度指を引き抜くと、イザークの腰がびくっと揺れた。
アスランが、イザークの細く白い足を片方肩にかけて、自分のジーパンのチャックをおろした。
そして、ゴムをつけて、イザークの中に自分のものを沈めていく。
「ぁ?…なに、いぁぁっ…んー!」
「っ、きついイザーク、落ち着いて深呼吸しろ」
突然の衝撃で息が上手く吸えず、イザークの体がこわばる。
しかし、アスランは少々無理に自身をすべて埋め込んだ。
中途半端だと自分も、イザークも辛いからだ。
「はっ…はぁはぁ…ぅぁはっ」
イザークの胸が激しく上下する。
とりあえず、アスランは彼女の呼吸が落ち着くのを待った。
「大丈夫か…」
「っ…は…はい」
自分を締め上げるイザークの中の力が緩んだのを見計らって、アスランは声をかける。
「じゃあ…動くぞ」
「っ」
イザークはアスランの背中に腕をまわした。
「あっ、熱い…せん…ぱい…もう…なんか…きちゃぅ」
「俺も…イッ」
「あぁぁんっ!」
アスランの激しい突き上げでイザークは生まれて初めての絶頂を味わった。
全身を激しく痙攣させて、背中をのけぞらせ、そしてベッドに沈んだ。
でも、まだ熱は引かなかった。
「はーい、交代ね」
いつの間にか、ビデオをスタンドに固定していたキラが、上半身裸になってベッドに乗っかってくる。
「綺麗だなぁ…イザークの肌。美味しそう」
キラはイザークの汗で湿った首筋をなぜ、そのまま手を下へと走らせる。
アスランはいったんベッドから降りて、部屋に備え付けてある冷蔵庫の中からミネラルウォーターを二本取り出し、
さっきまでキラが座っていたソファに座った。
一本は自分であけて飲み、もう一本はベッドにほうり投げる。
「イザに」
「了解。イザーク喉渇いたでしょ…いま、あげるからね」
キラは、ペットボトルの蓋を開けると、自分の口に水を含んで、そのままイザークに口付けた。
「っん」
「もっと、口あけなきゃ」
上手く飲み込めず、水の大半がイザークの口からあふれてしまった。
キラは、イザークの顎をつかみ、少し口を開かせて、二度目の水を与える。
「ん…っ」
ごくっとイザークの喉が鳴る。
「もっと…もっと欲しい」
散々、あえいでイザークは喉がカラカラだ。
キラは、何度も水を口に含んで、イザークの口に流し込んだ。
だんだん口が潤ってきたことを確認すると、キラはペットボトルの蓋を閉めて、
口付けをし、そのまま、舌をイザークの唇に差し入れる。
そして、彼女の舌を絡みとって、口付けを深くしていった。
時折、歯茎の裏側をなめると、そこでも感じるようで、イザークの肩が震える。
「んっ…っ」
「イザ…かわいい。好きだよ」
キラも、アスランと同じように、イザークに思いを告げる。
でも、イザークからの返事は無い。
しかし、この口付けを受け入れていることはわかる。
糸が引くほどの口付けの後、キラはイザークの体を反転させる。
「ぁ?」
「イザ、背中も真っ白」
肩甲骨の間に下を這わせて、少し吸い上げると、綺麗に赤い花が咲く。
「ほんと…綺麗だなぁ」
キラは、首筋、背中、腰、そして足の付け根に手と舌を這わせては、自分の印を残していった。
きつく吸われるだびに、イザークの体は反応し、びくっと震える。
「熱い…先輩、あつ…い」
まだ、薬の効果は切れず、イザークの全身を苛む。
「さすが、薬学部の作るのは違うね…大丈夫だよ、熱いのも忘れるぐらい気持ちよくしてあげる」
「ぅん」
「僕と一緒にイコうねー」
うつぶせだが、顔を後ろに向けて、うつろな目でイザークはキラを見る。
その顔にキラは再度キスをして、腰を抱えひざ立ちにさせた。
「腕で支えられる?あ、枕抱えるといいかも」
キラはベッドの上にあるクッションをイザークに渡して、それにつかまるように促す。
掴まったことを確認して、キラは後ろからイザークを抱いた。
「んっーー!」
「すごっ…」
ゴム越しでも伝わる、イザークの内部の熱さ。
すべてを持っていかれそうになるのをこらえて、キラは腰を動かす。
「んっ…ん…あぁ…キ…ラァせんぱい」
「イザ…イザーク」
「っは…また…またぁ…くる」
イザークはぎゅっとクッションをつかんで、揺さぶられている。
達するときは近い。
「僕も、イキそ」
キラは、イザークのクッションをつかむ手をはずして、彼女の両肘を掴んで持ち上げる。
イザークの背中がしなり、重心が後ろに来ることで、キラがより深くに入ってくる。
「あぁぁぁん!」
「っ」
突き上げる角度が変わる衝撃は大きく、イザークはそのまま達し、
キラも内部の締め付けに抗うことはできずに、達した。
イザークはキラの胸に背中を預け、跨ったまま荒い呼吸を繰り返した。
「親友のセックスを見るなんてって思うけど、イザークが乱れてるのは面白いな」
アスランが、水を持って再びベッドに乗っかる。
「僕も、悪趣味だけどビデオとりながら興奮しちゃったよ」
アスランはイザークに口移しで水を与え、キラは後ろから胸を揉み、腰を触る。
二度も抱かれ疲れ果てているはずなのに、薬のせいで、イザークはいまだちょっとの愛撫に感じ、
体を震わせていた。
「もう後一回ぐらいはイケそうかなぁ」
キラが触っていただけの愛撫から、快楽を引き起こすための愛撫へと序々に行為を変えていく。
「ん…あ…中…おっきく」
いまだイザークの中に入ったままだったキラ自身が形を戻し始め、彼女の内部で大きくなる。
「キラ、どけよ」
「えー、口でしてもらえば??きっとイザーク初めてだよ」
二回続けてなんてずるいぞという目でアスランがキラをにらむが、そう言われると、それもいいかもとアスランは思う。
「イザーク…」
「んっ」
キスをして舌を入れ、彼女の口の中を味わう。
そして、口を開かせたまま、アスランが言う。
「俺の、この口でイカセテ」
「あむっ…んー」
イザークに抵抗する間を与えず、アスランは自身をイザークの口に突っ込んだ。
「口の中も暖かいね…舐めて」
「くふっ…ん、あ…はっ」
言われるがままに、イザークは舌を這わせる。
「いいよ、もっと舌使って」
アスランは、イザークの頭を撫でながら、ゆるゆると腰を振る。
「こっちも、動くからね」
キラはこのままだと動きづらいので、さっきと同じようにイザークを四つんばいにさせる。
アスランもベッドに座りこむようになった。
イザークはキラには後ろから犯され、アスランには自身を咥えさせられ思うように声も出ない。
「っ…んっ…む…」
「好きだよイザ」
キラが言う。
「俺も、好きだよ」
アスランも言う。
「はふ…っ…んぅ…」
答えはやはり返ってこないが、それでもアスランとキラは行為をやめない。
でも、イザークの身体は彼らを受け入れていた。
自己満足の行為。
薬の力を借りて、イザークを自分達のものにしている。
それでも、あの入学式の時感じた、一目ぼれとも言うべき感覚。
同じ気持ちを抱いてしまい、でも譲る気にはならない。
だからといって、親友とけんかをする気も無い。
だったら、子供のころのように分け合えれば…。
たとえそれが長く続くことは無いとわかっていても。
イザークが正気を取り戻して、自分達を奇異の目で見ることになっても。
恐怖におびえ、罵倒されることになっても。
「イザッ」
「イザーク、イクよ」
「むぅ…んぅん!!!」
三度目の絶頂で、ついにイザークは意識を手放した。
アスランは、自分が達する前にイザークの口から自身を引き抜き、
そのまま彼女の顔に白濁としたものを吐き出す。
キラはイザークの中で達し、自身を彼女の中から引き抜くと、
コポッっという音をたてて、彼女の愛液が流れ出た。
イザークの気を失った顔を見ながら、アスランとキラが呟く。
「「逃がさない」」
しかし、意識を闇深くに落としたイザークにその言葉は届かなかった。
悪魔達の手に落ちた、天使の運命やいかに?