46.胸(キライザ)
※smile番外編7
熱くとろけるようなキスの後。
キラは優しくイザークの上着を脱がせた。
首筋をきつく吸い、赤い花を咲かせる。
イザークはお腹を気にしつつも、くすぐったさに身をよじる。
しかし、イザークが身をよじった時に、下着を着けていなかった胸がじかにキラの肘に当たった。
「んっ!!」
張っていた胸には少々辛い刺激。
「だ…大丈夫?」
ビクッと震えたイザークに、自分が何かしてしまったのではないかとキラが心配そうに声をかけた。
「うん…、胸が張ってるから…」
「あー、お医者さんも言ってたよね?そういう時って…」
キラがはじめての検診に言った時の女医の言葉を思い出した。
そして、ゆっくりとイザークの胸に手を当てる。
「優しくだよね」
「ぇ…ぁ…ぅん」
そう改まって言われると困るらしく、イザークがうつむく。
ゆっくり。
ゆっくり。
キラがイザークの胸を触る。
そのたびに、ピックピックとイザークが反応する。
こうしておけば、子供が生まれたときに授乳に困らないという。
「っ…キラ?」
「んーなんか、変な感じ。子供になった気分だよ」
この胸がうまれてくる子供を育てる。
自分もこうやって生まれてきたと…信じたいけれど。
それは事実ではなく。
そうだったら、どんなにいいかと。
このお腹の子には。
本当の母と父の元で。
元気に育ってほしい。
そう。
切に願う。
47.個人授業(アスイザ)
隊長アス×アカデミー生イザシリーズ2
「んーんー」
口を塞がれたまま、イザークはソファの上で一方的な愛撫を受けていた。
アスランの手は的確にイザークの急所を掠めていく。
流されまいとの必死の抵抗は、薬のために無意味で。
初めて感じる快感をどうやり過ごしていいのかわからず、どんなに睨んでもアスランは行為をやめてくれない。
制服のスカートの中に手が入り、薄い布をひきおろす。
その時、アスランの携帯がなった。
設定以来変えていないだろう着信音がこの応接室に鳴り響く。
アスランは左手を動かしつつ、右手で軍服のポケットから携帯を取り出した。
「あぁ…アカデミーだ。会ったよ?うん、俺はこのまま行こうと思うから、え?何してるか?」
「個人授業だよ?」
そういったアスランは、指を深くイザークの中に突き入れてきた。
「んっ!!!」
いきなりの刺激に、イザークの瞳からはポロポロと涙が溢れた。
痛みが下腹部を襲う。
体は動かないのに、神経は冴え切って。
「あぁ…今忙しいから。もう切るよ」
切るボタンを押して、アスランは反対側のソファに携帯を投げた。
「待たせてごめんね、イザーク。さて…授業を再開しようか?」
「んーんー!!!」
細い足が開かされて。
アスランの肩にイザークの足が乗る。
にやりと笑ったアスランの瞳の奥に悪魔の姿を見た。
ゆっくりとアスランの体が沈み。
声にならない悲鳴が。
イザークの頭の中だけで反響した。
48.単純なこと(九敦)
ただ、好きなんです。
慣れない仕事で帰ってくる貴方を見ると。
可愛いと思う。
疲れた貴方が私の肩にそっと頭を乗せると。
母親のように抱きしめてあげたいと思う。
あぁ。
好きなんだと。
単純に。
そうやって弱みを見せてくれる貴方や。
甘えてくれる貴方が。
好きなんだと。
「どうした?やけに…甘えるな?」
縁側で、ゆっくりと肩を寄せ合って。
夜空の星を見上げながら。
嫌そうな声ではなく、本当に優しい声で。
言い方がきついのはいつものこと。
それだって、ただの照れ隠しだってことは今ではわかりきったこと。
本当の貴方は正義感に溢れ、勇気のある、家族思いの優しい人。
「たまには…駄目ですか?」
「そ…そんなことは」
声だけで、焦っているのが判る。
あぁ、本当に愛しい人。
このたくましい腕は、皆の者だけど。
この肩には多くのものが乗っているけれど。
今日だけは。
今だけは。
私だけのものですよね?
「好きです…九郎殿」
49.笑い顔(将敦)
※小説の「共に見る白銀の朝日」と少しリンク
明日は大晦日。
有川家では今でも大掃除に大忙しだろう。
しかし、こちらの家でも掃除は大変。
私は将臣殿にお願いして、今日だけはこのマンションの掃除を手伝ってほしいといった。
そうしたら彼は笑って、当たり前だといてくれた。
自分の実家よりも、今の自分の家だろうと。
そう笑って言ってくれる将臣殿は。
本当に頼もしい。
「で、それを此処か?」
大きな荷物を持って、部屋から部屋へと移動する。
「はい…ベッドの横に」
「次は?」
次々に掃除を手伝って、私のワガママでの模様替えにも手をかしてくれる。
「換気扇の螺子をはずしてください。油が凄いので」
「わかった」
嫌な顔ひとつせずに手伝ってくれて、私は本当に感心した。
男というものはあまりこういった家事には手を出さないと思っていた。
テレビでもそういう夫が多いと言っていたし、鎌倉でもやはり家事は女の仕事だった。
畑を耕しだした将臣殿を兄上意外は皆奇異の目で見ていた。
あ…知盛殿は違ったけれど。
「あの…先に休憩にしますか?」
昨日まで仕事だったのだ。
私は三日前に仕事を終えているので、そこまでつかれていない。
しかし、将臣殿は…。
「何気を使ってるんだよ。じゃあ…これだけはずしてから、茶でも飲むか」
ポンポンと頭を撫でてくれる。
本当に。
「ありがとうございます」
「ん?」
ニカッと笑って。
ずっと笑っていてほしいです。
50.目で犯す(弁敦)
「敦盛君…いい格好してますね?」
冬なのに、大雨。
冬は西高東低の気圧配置で天気がよい日が多い。
しかし、今年に限っては雨になる日が多かった。
図書館へ調べ物にいった帰り道。
敦盛はいきなりの大雨に降られ、走って有川家まで帰ってきた。
玄関にはいり、ポタポタと濡れ鼠になって…しかし困る。
このまま家の中に入れば、廊下が汚れる。
仕方なく、敦盛は自分の部屋に一番ちかい縁側から中に入ることにした。
そっと縁側の戸をあけて、中に入ろうと思うが、やっぱり家の中が濡れるのが気になる。
自分の屋敷ならば別なのだろうが、やはりおいてもらっている身。
気になる。
とりあえず、水を吸って重くなってしまったコートを脱ぐ。
それを脱いでも、まだ下は水に濡れていて。
シャツが体に張り付いていた。
「はぁ…風邪を引かないようしないと」
コートで出来る限り水分を取り、頭も拭いてしまい、いざ中に入ろうとすると、
目の前に弁慶がいた。
「透けてますけど?」
言われて初め気付くのは、下着が透けていたということ。
「っ…」
あわてて、コートで前を隠す。
「何も…そんなに怯えなくてもよいでしょう?さぁ…風邪を引きますから」
上から手を差し伸べられて、敦盛はそれを取るか戸惑う。
優しい声音とは別に、射抜くような目が危険信号を示しているようで。
「あっ…」
「何もしませんよ」
でもその目が訴えるのは。
欲望。
ほしいという訴えが。
その手を取ると危険と判っているけれど。
「ありがとう…ございます」
そう、手を敦盛は取ってしまった。
濡れたからだと、貫く視線。
交じり合う。