26.三日間監禁(九敦)
「平家の者を仲間に入れるというのか!!」
望美が拾ってきた公達。
あまりにも美しい着物にすぐにわかった。
源氏にこのような者はいない。
考えられるのは。
平家だということ。
「何でですか!!彼は、八葉です」
「だが、アイツは平家だ。俺達は、平家を倒すために旅をしている!!」
「…でも」
屋敷の中での話し合い。
いくら望美が言っても、九郎は折れない。
「九郎…彼は八葉。いないと…ダメだよ?」
白龍がそう言っても、中々首を縦に振ろうとしない。
「傷が治るまでは、ここに置いておいてもいいのではないですか?」
「弁慶さん…」
別部屋で敦盛の治療をしていた弁慶が戻ってきた。
「それは…」
九郎は言葉を濁すが、弁慶に言われて仕方なく…
「勝手にしろ…でも、3日間だ!その間に俺が色々問いただすからな!」
そう言って部屋を出て行った。
夜。
九郎は皆が寝静まった後に一人で、敦盛がいる部屋へと赴いた。
かすかな寝息が聞える。
『コイツは…源氏にとって足手まとい。此処で…いっそう』
殺してしまえば。
源氏の将来も安定し、兄上にもなんら影響はない。
九郎はゆっくりと腰に差してある剣を抜いた。
キッという音と共に剣が抜かれ、そしてその剣が寝ている敦盛を貫こうとした。
だが、かすかな気配に気付いた敦盛が布団を九郎に向けて飛ばし、
傷ついた身体をおしてその場から逃げた。
九郎は仕方がないというふうに、布団を跳ね除け、敦盛を追った。
怪我をしていなかったら、逃げられただろう。
しかし、上手く体を動かせない敦盛は畳をはいずるように動くしか出来ず、
結局九郎にのしかかられてしまい、そのまま動かなくなった。
「皆のためだ…」
「…」
思い声で言う九郎に、敦盛は何も返答しない。
そして、九郎の手が敦盛の胸に触れ、彼の身体を押さえて剣を構えようとしたとき。
手に思わぬ感触。
男にはない、柔らかいモノが九郎の手に触れた。
「な…何?…む…胸!?」
九郎が慌てて敦盛から離れた。
「…私は男ではない。女だ」
九郎が離れたことで、敦盛も起き上がって、乱れた着物をなおした。
「どうしました!!!!」
騒ぎにいち早く気付いたのは弁慶。
「九郎??」
「お…俺は…女を」
九郎は何か言葉を発した後、いきなり立ち上がり部屋から物凄い勢いで出て行った。
「大丈夫でしたか?」
「あぁ…弁慶殿は言っておかなかったのですか、私が女であると」
「えぇ…気付くと思ったのですが」
あの子は中々そういうことに疎くて。
はははと笑いつつも、黒いものが見え隠れする。
その後、九郎が自室に閉じこもり、出てくるまでに3日かかった。
27.照れ笑い(ヒノ敦)
『ヒノエ…だいすき』
あの頃の敦盛は、本当に可愛かった。
まるで、蕾だった花が一斉に咲き乱れるような彼女の笑み。
一人熊野へ来て、寂しい思いをしていると思って俺は一生懸命彼女を笑わそうと思っていた。
海へ連れて行ったり。
船に乗せたり。
でも、どれも効果は得られなかった。
しかし。
山の中。
小さな野の花が咲き誇る場所へ敦盛を案内したら、彼女の表情が一変した。
そこに咲く野の花のように可憐で、しかし大輪の花にも負けない笑顔で。
此処にこれたことを喜んだのだ。
それ以来。
ヒノエは何かあると敦盛に花を贈った。
「姫君はご機嫌斜めなのかな?」
「…ちがう」
リビング(とこの時代では言うらしいにあるの椅子に腰掛けて、明らかに不機嫌そうな敦盛にヒノエが声をかける。
ヒノエとしては別に何もした覚えはない。
敦盛をゲットして以来、他の女に手はだしていない。
株も順調だし、敦盛に何も言わずに出て行くことはない。
「言ってくれないとわからないよ」
「…ヒノエはずるい」
「?」
「最近、優しすぎる。何でも私の言うことを聞いてくれて…ふらふらしないし。ヒノエらしくない」
ヒノエとしては敦盛を思って行動していたのだが、それが敦盛の癇に障ったらしい。
確かに、以前は(向こうの世界にいたとき)は敦盛や望美に言われてもそれに従うような自分ではなかった。
でも、この世界に来て、権力や財産があるわけではない。
一人で勝手に行動することはとても危険であり、この世界で自分はとても無力だと気付いた。
そんな中で生きていくためには、ふらふらしていてはいけない。
敦盛を守るため、一緒に生きていくためには…。
そう思っての行動なのに。
「俺を気遣ってくれるのかい?」
椅子に座る敦盛の背後に回って背中からそっと敦盛を抱きしめる。
「…そうだ。…悪いか」
小さな声でそういう。
素直にそういった発言をするのはとても稀で、ヒノエは少々驚いた。
よほど心配していたのだろう。
言葉数が少ないが、かすかに見える真っ赤な彼女の顔がすべてを物語っている。
「ふっ…照れてるのかい?顔が真っ赤だよ」
「う…うるさい」
照れる君
笑う俺
28.肩越しの景色(キライザ)
抱きしめても、君の心は虚ろ。
「イザーク」
優しく囁かれて、抱きしめられて。
自ら望んでここに来たはずなのに、キラに抱きしめられると心が痛い。
優しく頬を撫でられて、キスをされて。
身体は確かにキラを受け入れていて。
余す所なく、お互いを感じあっているはずなのに。
何かが足りないと思うのは。
キラだけではないはずで。
イザークも確実に感じている違和感。
「イザ…僕は」
「何も言うな」
今は忘れたい。
ただ快感だけを私に与えてくれ。
イザークは自分からきつくキラに抱きつき、背中に腕を回し、爪を立てた。
流されてしまえばいい。
このまま、キラのことだけしか考えられなくなればいいのに。
でも。
ふと頭がクリアになって、彼の肩越しに見える景色がいやに霞んで見えた。
以前は天井のまっさらな壁でさえ、自分を見ているように感じて、視線をどこにやっていいのか判らなかった。
人が違うと、ものの見方まで変わってくるのだと。
正直気付いてしまった。
「イザ」
キラは優しい。
自分を庇うように、優しく、優しく突き上げる。
それがもどかしくて、イザークは首を左右振った。
「…っ…ぁん…もっと…もっと」
「くっ」
もっと激しく。
頭の中が真っ白になるくらいに。
壊されてもいいから。
もう戻ってこないあの人を。
私の中から消して。
29.歳の差(リズ敦)
「敦盛さん、リズ先生。遊園地に行きませんか??」
「ゆう…えんち??」
連休で学校も休みだし、どこか出かけに行こうと言い出したのは望美。
それに賛同したのが、玄武を除く八葉と朔と白龍。
敦盛とリズヴァーンは昨日の帰りが遅かったため、報告が当日になった。
行かない理由もないので、2人は勿論承諾した。
休日中ということで、やはり遊園地は混んでいる。
それでも、10人は楽しく乗り物に乗ったり、イベントを見たり楽しんでいる…と思われた。
「私は…ここで待っている」
「え…でも…」
この日を楽しみにしていたのだろう、ヒノエや白龍はわれ先にと次の乗り物の入り口へと向かっていく。
望美や譲たちもそれに続いていこうとしているので、それに後れないように行こうと敦盛も歩き出したのだが、
一緒にいたリズヴァーンがそういうので、皆から遅れてしまった。
「敦盛行きなさい、私は…こういったところは合わないようだ」
「…あ…はい」
行きなさいといわれると、それに従いざるをえない。
敦盛にとって、リズヴァーンは恋人である以上に先生という上の立場の人間である。
そんな存在の人に言われれば、従うしかない。
しかし、一人でこのような場所にいるのも寂しい。
敦盛は皆を追うフリをして、他の場所へと向かった。
「…」
リズヴァーンは敦盛が向かったのを見届けて、乗り物の近くにあるベンチに腰掛けた。
若い彼らがこのような所を楽しむのは判る。
しかし、どうも自分はなじめない。
皆といるのは楽しいが、どうも合わないと思うことも多くある。
自分が彼らよりも長い年月を生きているからだとは判っていて、
ムリにあわそうとは思わないし、彼らもそれをわかっている。
しかし、敦盛と一緒にいられないのは寂しい。
彼女は若い。
こういった場所好きだろう。
自分がもう少し若かったらと思うこともある。
「先生…すみません」
皆の下に行ったと思っていた敦盛が、自分の所に戻ってきた。
両手に紙コップを持って。
「すみません…戻ってきてしまいました。あの…これ」
湯気の立つ紙コップを敦盛がリズヴァーンに渡した。
「ここにいてもいいですか」
ムリをしているんじゃありません。
私がここにいたいと望むのです。
うっすらとリズヴァーンが微笑んだ。
30.冷血ヤマネコとブラッディーウサギ(アスイザ)
「お前…その傷どうした!!」
ボロボロの血まみれになって集合場所に戻ってきたイザークに幼馴染のディアッカが声を荒げる。
イザークは野外訓練のため、迷彩服をきっちりと着込んで出て行ったはずだ。
昨日。
アスランとチームを組んで、イザークとアスランは野外訓練に出発した。
軽装備をして、1日追跡機械から逃げぬくというミッション。
山あり谷ありの野外訓練場は、日々様子を変える、迷宮。
イザークとアスランはその類稀なる身体能力で、追跡をことごとくかわし続け。
ほとんど無傷のまま残り半日。
鬼のような訓練だが、一応仮眠の時間はある。
深夜の4時間だけは追跡が切られるので、ゆっくりできる。
二人は取りあえず、大きめな池がある場所に出て、休むことにした。
火を焚くことは、周りに人間がいるということをばらすことになるので、火は焚かなかった。
二人とも服は泥だらけなので、お互い離れて服を脱ぎ池の中に入った。
迷彩を脱いで、Tシャツとハーフパンツ姿で水に飛び込むイザーク。
星の光に照らされ、清水に濡れる彼女はとても神秘的で、アスランは思わず見とれてしまった。
訓練中だというのに、正直に動くからだが憎い。
アスランは思わず、イザークの方へと泳いでしまった。
その後、訓練中だというのに、美味しく頂かれてしまったイザーク。
ただでさえ疲れているのに、行為を強いられて、ヘロヘロになってしまったイザーク。
しかし、訓練の時間になると、アスランの表情は一変した。
イザークを庇う様子も無く、もくもくと訓練に没頭している。
さすがのイザークも、ちょっとはフォローしてくれてもいいんじゃないかと思うくらいだ。
結局、イザークはボロボロになって訓練を終えたのだった。
「なんでもない!!!」
ディアッカに心配そうに言われて、思わず真っ赤になってイザークは叫んだ。
「教官には許可を貰った…部屋に戻る」
「ぁ…あぁ」
ぽかんとしたディアッカを横目に、怒った表情でイザークは部屋へ戻っていった。
それと入れ替わるようにアスランが戻ってきた。
イザークのボロボロさとは違い、アスランは泥で汚れている以外まったく外傷はない。
むしろピンピンしている。
「両極端だな…」
「なに?あーイザ戻った??かなり酷い惨状だったからなぁ」
顔がにやけているアスランに不信な目をディアッカが向ける。
「お前…訓練なんだから、大概にしろよ」
「何のこと?」
大体何が起きたのか想像できたディアッカの牽制を意図も簡単に流すアスラン。
俺もお先に…そう言って軽い足取りで戻っていくアスランを見送って、ディアッカが大きくため息をつく。
「頑張れイザーク」
冷血ヤマネコ=訓練中アスラン
ブラッディーウサギ=ボロボロイザーク