6.恋情(キライザ)
※smile番外編2


そういえば言ったことが無かった。
どれだけキラが好きか。
どれだけ愛しているか。
キラのどこが好きか。
私の恋心を聞いて。

「やさしいところが好き」
「ん?」
毎晩一緒に寝ている。
今日もキラの部屋のキングサイズのベッドに二人で入って、今日あった話をする。
それが終わると、キラのキスがイザークの唇に降りてくるのだが、
今日あった出来事の話が終わると、イザークが唐突に話を始めた。

「キラの好きなところ。やさしいところ。声が心地いいところ」
「うん」
「手も好き。唇も…深い紫の目も」
ひとつひとつ言いながら、イザークがキラの上に乗っかって、
手で顔を触っていく。
綺麗で滑らかな指がキラの体を滑っていく。
「抱きしめてくれる腕も…支えてくれる胸も」
「くすぐったいよ」
キラがイザークの手に笑いながらも、指を絡める。
イザークがそれから手を話すように、キラの夜着の上着に手をかける。
一つ一つボタンをはずし、胸に口付ける。
「…全部好き。キラ」

「愛してる」

言わなくても伝わっていると思う。
でも、言いたくなった。

私の恋心は伝わった?





7.処女(将敦)


「経正には?」
「あ…兄上には、何も言っておりません。これは、私のことですから」
いつも、経正の後にくっついていた敦盛。
それが、今日は彼に何も言わず、一人の女として将臣の部屋に来たのだ。

ずっと恋人として過ごしてきたが、シスコンの経正は絶対に認めてくれない。
そして、知盛や惟盛まで、将臣の邪魔をする始末。
そんな邪魔に対して、敦盛は何も気づかない。
だんだんとイライラしてきた将臣はついに、敦盛を呼び出した。

「こっち来いよ」
部屋の入り口に立ったままの敦盛を将臣が手招きをして呼び寄せた。
「はい」
何もわからない敦盛ではない。

今日の昼間。
屋敷の庭の奥。
誰も来ない、誰の目にも留まらない所に将臣は敦盛を連れてきた。
『今夜、俺の部屋に来て欲しい』
そのときは何も考えず、頷いてしまったのだが、
その後部屋に帰り、一人で考えてみると…。
やはり、そういうことなのだろうか。
(以前知盛がそういうことをしているところを見てしまったことがある)
敦盛も男として育てられたとはいえ、年は18。
女であったら、結婚し子供もいる年である。
おかしくは無い。
おかしくは無いのだが…。

「緊張してるのか?」
月明かりとろうそくの明かりだけが、二人の姿を照らしている。
「ぃ…いえ、その」
「大丈夫だ。俺も…な?」
将臣は、敦盛を抱き寄せて自分の胸に彼女の耳を当てさせる。
すると自分と同じか、それ以上に鼓動が早鐘を打っているのが聞こえた。
「将臣殿」
「な?」
「将臣殿…お慕いしておりますから」
小さな敦盛の手が将臣の背中に回る。

「初めてだろ?優しくするから…受け入れてくれ」

将臣は静かに敦盛の体を布団の上に横たえた。





8.あのときの表情(アスイザ)


夜の彼女は一言で言うならば妖艶。
普段は、とてもクールな彼女。
何も知らないような顔をして、指揮官として働く君。

「やらしい顔…イザ、見える?」
「っ…やぁ」
目の前には鏡。
脱衣所にある洗面台に手をついて、後ろからアスランに犯される。
一人で風呂に入り、出たところになぜかアスランがいた。
別に恋人であるので、変なことはないし、イザークも彼には部屋のロックナンバーを教えている。
だが、あまりの性急さにイザークも抵抗した。
しかし、力の差は歴然。
あっけなく背後に回られてしまった。

「ほら、鏡見て」
「っ!」
目をそむけようとすると、アスランの手が顎に回り鏡のほうへと顔を向けられる。
「イザ…淫乱。…気持ちよさそう」
「やだ…アス…ラっ」
「イザの嫌だはもっとだよね」
深く貫かれて、ひざがガクガクするが、アスランが腰を支えているので崩れ落ちることは無い。

「俺だけに見せて」
「ぁん…」
「その顔、俺だけに、俺の…イザっ」
「ひぁぁぅん!」

『ジュール隊長ってさぁ…美人だよなぁ』
『あぁ、ほんと一晩だけでもお相手してもらいたいよな』
『うわ、お前それ問題発言!!』
『だってさぁ…普段はあんなにクールなのに。でも、クールなのに限って夜はきっと…』
『乱れるって??見てみたいね…おっと、時間だ。行くぞ』
そんな下級兵士の会話をアスランは聞いてしまった。
イザークがアスランの彼女だと知らないものはこのザフトにはいない。
自分に対する挑発か。
それを聞いたときから、アスランの中で何かが切れていた。
急いでイザークの部屋に行き、風呂上りのイザークと無理やりに近い形でつながった。

イザークのこんな表情を知っているのは自分だけだと。
わかってはいるのだけれど。
確かめずにはいられなかった。





9.DOG TAG(知敦)
※5.拘束の続き


「…ここは?」
気がついたら、知らぬ部屋だった。
肌寒さを感じて自分の体を見ると、何も着ていない。
薄がけが一枚かけられている。
起き上がろうとしても、下腹部の痛みでうまく動けなかった。
上体を天井に向ける。
ふと首と手首に違和感を感じて、まず手首を見る。
それは昨日、知盛によってつけられた鎖。
そしてそのまま首に触れると、今までは無かった鎖が首にぴっちりと巻かれていた。
首に下げられた鎖とあいまって、かなりの重さになっていた。

「知盛殿…」
昨日の夜敦盛は知盛に抱かれた。
無理やりだったのかもしれないが、敦盛はそうは思わなかった。
だって、知盛が好きなのだから。
信じて欲しかった。
決して彼のことを嫌いになったから、平家を裏切ったわけではない。
彼を裏切ったわけではない。
これ以上自分のような怨霊を作り出して欲しくないから。
だから、神子と共に旅に出たのだ。

「気が…ついたか?」
「知盛殿」
部屋の障子が開いて、知盛が入ってくる。
敦盛のいる布団の横に知盛が座った。
「水だ。飲むか?」
竹でできた水筒を持ち出して、敦盛に見えるように差し出す。
昨日は声を出しすぎたために、敦盛の喉はからからだった。
「はい…っんぅ」
欲しいと言った。
手を伸ばしたら、その手を掴まれた。
知盛は敦盛に直接飲ませず、自分の口に水を入れ、口移しで水を敦盛に飲ませた。
彼女に覆いかぶさり、唇を合わせ水を流し込む。
「っ…ふぅん…」
水がなくなっても、しばらく知盛は敦盛にやわらかい唇を味わった。
「ぅふ…ん…はぁ、ぁ…はぁ」
「どうだ…美味かったか?」
「…もっと…ください」
敦盛が誘うように、知盛の肩に手を伸ばす。
「ふっ」
知盛が薄く笑って、再び水を飲み込んだ。

飼われてもいい。
知盛にならば…。





10.腕(九敦)


昼間は望美や譲、将臣は高校に行っている。
なので、有川家には九郎とリズヴァーン、景時、ヒノエ。
そして春日家には朔と敦盛がいる。
しかし、朔はヒノエや景時と出かけてしまい、
今有川家には隣の家から来た敦盛とリズヴァーン、そして九郎しかいない。
有川家の縁側には話をしている九郎とリズヴァーン。
その二人に台所を借りて敦盛がお茶を入れた。
「先生、九郎殿…どうぞ」
「あぁ、すまない」
九郎が礼を言って敦盛からのお茶を受け取る。
「先生?」
リズヴァーンからの反応が無いので、敦盛がお茶を差し出す。
「私は行かなければいけないところがある…敦盛すまないな」
「いえ、とんでもありません。気をつけてお出かけください」

リズヴァーンが出かけてしまい、家には九郎と敦盛の二人だけになってしまった。
「敦盛、座らないのか?」
「あ…はい」
言われて、チョコンと九郎の隣に敦盛が座る。
「…静かだな」
「はい、皆がいないと…少々寂しい気がします」
「でも…二人になれる時など無いからな。俺は…うれしい」
最後の言葉は照れているのか、小さくなっていったが、敦盛にはしっかり聞こえていた。
「私も…その」
「敦盛…っと」
いきなり九郎が立ち上がり、そして敦盛の背後へ回った。
彼女を抱きしめるように座りなおしたのだ。
「く…九郎殿!?」
「誰も見ていない…」
九郎は髪に顔をうずめる。
紫の髪は、とても柔らかくさらさらで、鼻をくすぐるいいにおいがする。
昼間にこんな風にくっついていられるのは無い。
なので、九郎はこの機会にくっついていようと思っているようだ。
「九郎殿?」
「幸せとはこういうことを言うのだろうか」
ずっと信じていた兄から迫害された。
自分のしてきたことの意味がわからなくなった。
敦盛も敵だった。
殺そうと思った。
でも、今は違う。
この手で守りたいと思う。
「きっと…そうだと思います」
「今日はもう少しこうしていたい」
「はい」

ずっとこの腕の中いたいと。
敦盛は感じた。



  
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