81:目と目で通じ合う!?
以心伝心という言葉がある。
言わなくても判るということ。
でも、言わなければ伝わらないことは沢山ある。
「なに?どうしたの」
新聞を読んでいたアスランをイザークがじっと見つめている。
「…」
「ほんと、どうしたの?」
「・・・」
判ってもらえず、だんだん、イザークはイライラしてきた。
ジーッと見つめて、そして、今度はさりげなく視線を新聞に落としてみる。
「新聞に何か書いてあるの?」
アスランがそういうと、イザークの表情が少し明るくなる。
対面で座っているため、アスランが読んでいる記事の裏にイザークの何か興味を引く記事が載っているのだろう。
アスランは新聞をひっくり返した。
「旅行いきたいの?この間NYに行ったばかりだよ?」
つい先月にアスランの出張でイザークは着の身着のままでNYへと行ったのだ。
しかし、それは仕事。
年度末に突入して忙しくなる前に、一泊でもいいのでどこか行きたい。
「・・・」
イザークは再度アスランを見つめる。
『行きたい!』光線をヒシヒシと浴びて、アスランは愛する妻の望を聞いてしまった。
「オマエも、私の考えを読めないとは…まだまだだな」
「なんかに、影響されたの?」
「夫婦という仲は、言わなくても、目が合っただけで色々判るらしい」
「…昼ドラの見すぎだよ」
82:限界
※73:ギャングの続き
年のせいか…。
自分で思うより、限界は早くくる。
「おい、アスラン、もう終わりか?」
サッカーボールを片手にミゲルJrがそう言う。
日曜日の午前。
イザークは、今日も仕事で忙しい、ミゲル夫妻の変わりに息子を預かっていた。
昼食はどこか外で食べたいという、Jrのお願いだったので、
じゃあ、こんな天気もいい日なのだから、どこか公園で遊んでから
ランチにしようということになった。
Jrが家からサッカーボールを持ってきていたので、アスランとイザークも
運動しやすいカジュアルな格好に着替えて、車に乗り込んだ。
そして、大きな運動公園へ着き、早速Jrはアスラン相手にサッカーを始めた。
最初はアスランが意外と上手いので、Jrが意地になって彼を追い掛け回した。
しかし、時間がたつに連れて、アスランの動きが鈍くなってくる。
終いには、アスランのほうがギブアップしてしまった。
「ちょっと…休憩」
「おっさん」
「うるさい!」
へとへとで、イザークが持ってきていたシートに転がるように倒れこんだ。
「お疲れ、Jrも少し休憩しよう?飲み物買ってきたから」
「はーい」
スポーツドリンクをイザークから手渡されて、ごくごくとJrが飲み干す。
アスランも、ゼーハーいいながらドリンクを飲み干した。
「おい、またやるぞ!!」
子供は元気なもので、まだ10分も経っていないのに、もう回復したようだ。
アスランの上着を引っ張り、Jrが立たせようとするが本当に疲れてしまって、
さっきと同じように彼に付き合うのは無理そうだ。
「勘弁」
「Jr,、サッカーじゃないとダメか?あっちにサイクリング出来るところがあるぞ?
私と一緒に、二人乗りの自転車に乗ろう」
疲れ果てた夫を見かねて、イザークがJtを他の遊びへとさそう。
Jrはイザークに誘われたことが嬉しくて、二つ返事でサイクリングの受付に飛んで行った。
「じゃあ、ちょっと行ってくるから、その間休んでろよ」
「あぁ…ありがとう」
年のせいにはしたくない。
でも、このぐらいでへばるのはやはり年なのかと思ってしまった。
20代前半と言い張りたいある日曜日。
83:悲鳴
※82:限界の続き
「ん…朝…アスラン…もう、朝」
ゆさゆさ。
目覚ましがなったので、イザークがアスランを起こそうとする。
いつもどおり、起こした(揺すった)つもりだったのに、
なぜか悲鳴が轟いた。
「いっ…たい!!!痛い!!触んないで」
普段、こんな声は出さないだろう。
悲痛な叫びが寝室にこだまする。
「まさか、昨日の…で?おまえ、筋肉痛?」
イザーク揺すられたことが、どうやら悲鳴の原因だったようだ。
昨日はミゲルの息子と一緒に公園でサッカーを疲れ果てるまでやった。
そのダメージが今日、回って来たようだ。
「昨日の今日か…まだ、若い証拠じゃないか」
イザークがそう言って、ベッドを抜けて着替えようとするが、彼女がベッドを抜ける時の微かな振動さえ、身体に響く。
「うっ…」
なんとも情け無い姿だ。
「…先に、下降りて準備しておくから、ゆっくり降りてこいよ」
その日アスランは結局1階に下りてくるまでに20分かかり、
朝食を食べることなく、そして見るに見かねたイザークが会社まで彼を車で送り届けたのだった。
84:塊
「イザーク、アスラン、元気?」
「おじゃまします」
休日の午前から暢気にやってきたのは、アスランの幼馴染のキラ。
そして双子の姉のカガリだ。
両手にたくさんのビニール袋。
それをキッチンの床に置いた。
イザークは休日だが、朝から洗濯や掃除で忙しいので起きていたが、アスランはどうやら、二人の来訪で起きたようだ。
のろのろとリビングに下りてくる。
「いらっしゃい…朝から元気だね」
とりあえず着替えはしているものの、顔も洗ってないようだった。
「アスラン、お邪魔してるよ?今日はね、天気もいいしバーベキューでもしようかなぁ〜って色々持ってきたんだ」
「肉もあるぞ!」
そう言って、双子はビニール袋の中から次々と食料品を取り出し、テーブルに並べ始めた。
野菜類、肉の塊、魚介類、果てはフルーツと酒。
まぁ、良くもこれだけ持ってきたもんだと感心する量だ。
「バーベキューセットは君んちにあるから、ね、やろうよ!」
これだけのものをもってきて、嫌だとは言えない。
「じゃあ、私が持ってくるから、アスランはコーヒーでも飲んで、目を覚ましてくれ」
イザークは、バーベキューセットを取りに、物置へ。
キラとカガリは、持ってきた食材を調理し始めた。
その後、このメンバーだけじゃ寂しいということで、ご近所のミゲルとその息子を呼んだ。
大きな肉の塊を串に刺して焼いているのを見て、Jrは目を輝かせた。
「まだぁ〜」
「もうちょっと待ってな?」
焼いているイザークの傍をうろちょろしつつ、焼けるのを待つ。
ミゲルとアスラン、そしてキラは外にあるテラスのベンチで、キラが持ってきたワインを飲む。
カガリはイザークと料理の係りだ。
「うーん、いい休日だ」
ミゲルがふと呟く。
漸く暖かくなってきた。
もうすぐ桜の咲く季節。
にぎやかな声が、ザラ家の庭にこだました。
85:懐かしい
忙しくなる前にという事で、アスランは1泊2日の旅行を有給を取って決行した。
金曜日に有給を取り、土・日と休み。
金・土曜日に旅行に行って、日曜日は家でゆっくり休むという計算だ。
金曜日も平日なので、空いている。
朝早くに出発し、その旅行先にある有名なショッピングモールで買い物を楽しむ。
キラ達やそれぞれの両親のお土産も勿論忘れない。
「オマエなんだそれ?」
キラは機械系の面白いものがいいだろうという話になり、電気系統を扱う店に入った。
中には、一般的な家電から、玩具まで、色々なものが低価格でそろっている。
その中で、アスランはとても懐かしいものを見つけた。
ロボットの鳥だ。
「ん、これさぁ…昔、同じようなものをキラに作ったんだよね」
「ふーん、どれどれ」
玩具コーナーに無造作に置かれている鳥の玩具をイザークが手に取ると、鳥は動き出した。
どうやら背中にソーラー電池が入っているらしく、また人が触れることで動き出すらしい。
「アイツ…まだ持ってるのかなぁ」
貸して?といってアスランがイザークからその鳥を自分の手に乗せる。
クビをかしげたり、ちょんちょんと飛んだり、かなり精巧に出来ている代物だ。
「これに…するか?」
イザークがアスランを覗き込む。
「うん、2つ買ってこう。家用とキラに」
男の友情は、女なんかよりもずっと強い。
ちょっとキラがうらやましいと思ったイザークだった。