(長谷川×田口♀:ドラマ設定)
厚生労働省の抜き打ち査察と同時期に救命の精神医療サポート要因として入ってきた、田口という女医。
ぼさぼさの髪の毛に色気の無いシャツとズボン。少し猫背で、どうもしゃきっとしない。
しかし、彼女はバチスタスキャンダルの解決に一役買った影の功労者。
見た目よりも、しっかりしていて、あの速水先生にだって、物怖じしない。
「長谷川先生、お疲れ様です」
今日も今日とて、ぼさぼさ髪で田口がICUにやってきた。手には数冊のカルテ。
今日はめずらしく、救命の電話は鳴らず、長谷川をはじめ、佐藤や和泉、研修医もICUや医局でのつかの間の休息をとっていた。
長谷川は、ステーション内にて患者のカルテの記入最中だった。
「田口先生お疲れ様。今日はこれから?」
長谷川が時計を見ると、時計はすでに午後7時を回っていた。今日は当直か、夜勤だろう。
「はい。今日はこの後、ご家族の方との治療方針の話し合いが1件入っていて、和泉先生のケースなんですけど、同席します。その後は、心療内科の病棟の当直です」
田口もステーション何に入り、机にカルテを置く。椅子に座って、ふーっとため息を付いた。
「疲れてるの?」
長谷川はカルテから目を離さずに田口に問いかける。
「いえ、私あんまり体力ないので、皆さんタフだなぁって…まぁ、タフじゃないと救命は出来ませんよね」
「まぁね」
田口もカルテをぺらぺらと捲り、目を通す。
しばしの沈黙の後、長谷川がカルテを書き終わり、ペンを置いた。
「田口先生、前髪邪魔じゃない?」
長谷川が横に座っている田口を見ると、猫背で前髪が目にかかっていて、カルテも見辛そうだった。
「あ…えぇ、でも美容院に行く暇ないし…」
気づいた田口は、カルテを置いて、手で髪をいじる。
確かに、ゆるい天然パーマは伸び放題で、くるくるしている。
「ピンとかで、こうやってあげてみたら?」
長谷川は、何の気なしに田口の額に手を当て、前髪を掻き揚げた。
大きな手が、髪をかきあげ、出てきたのは、長谷川が想像もしていなかった、大きな目。
くりくりとした、黒目の大きな目は、睫毛も長い。肌の色は白くて、顔は小さかった。
唇はまるで、さくらんぼのようだし、髪の毛が邪魔をしていて見えなかった顔全体を見ると、少し年齢よりは幼く見えるが、整っていた。
いわゆる、美少女だ。
「長谷川先生?」
長谷川は思わず、じっと田口の顔を見てしまった。
田口に声をかけられて、あわてて、手を額から離す。
「ご…ごめん、田口先生。あのさ、前髪上げてみたら?結構…」
『長谷川!8番』
いきなり、速水の声が放送から流れる。
「はい!」
長谷川は、悪戯を見つかったような気持ちがして、あわてて立ち上がると、異常が発生したであろうベッドに直行した。
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